転職日記|業界新聞の面接…①

転職日記

まもなく2011年だ。
1991年3月に転職したから約20年の歳月が経ってしまったことになる。
厳密に言えば一昨年、同じグループ内の別会社に再び転職となったのだが、オフィスも同じで単に机が5mくらい移動しただけなので、世間一般の「転職」とはかなりイメージは違うが、ちゃんと前の会社に「退職届」も出したし保険証も返したし、何と言っても私の「ボス」が代わったわけだから立派な転職である。しかし自分でもイメージとしては「転職」というよりは「転社」のほうがしっくり来る。

最初の転職時、私は単に「書く仕事」をしてみたかった。
書く仕事であればなんでもよかったのだが、前職は下町の水泳帽と介護用品を作っているメーカーだったので、まったくの畑違いでもあり、未経験そのものだった。
当時はバブル真っ只中だったので就職情報誌は毎週電話帳のようにぶ厚く、特に営業職であれば引く手あまたの世の中だった。
素人考えで「書く仕事」=「出版社」だと思っていたので、いくつかの出版社を当たってみたが、そこで分かったのは「出版社」は原稿を集めるだけで特に自らなにかを書くことはしていない、という事実であった。そうか、世の中はこうなっていたのか。
では誰が書いているのか。その多くは「編集プロダクション」だという。そんな仕事のジャンルがあるということも初めて知った。

そこで次なる標的として「編集プロダクション」なるものを片っ端から当たっていった。学校の問題集を作っている会社、通販カタログのDMを作っている会社、OA機器の取扱説明書を作っている会社、表向きは非営利法人だがどう見ても内情は一種の新興宗教っぽい組織の会報や新聞を作っている会社などなど・・・。しかしこれだけの買い手市場の中で、ライティングというある種「専門職」ということで、未経験者のおれはことごとく断られてしまった。唯一OAの説明書を作っていた会社から二次面接の通知が来た。
毎週就職雑誌を買っていたが、その中でずっと求人を出し続けている会社があった。業界新聞だったがキャッチコピーには「新聞記者募集、未経験者歓迎!」と書いてあった。週休二日でないのがちょっと気に入らないなどとふざけた理由で最初は敬遠していたが、「新聞記者」で「未経験者歓迎」ならこんなにいい条件はないではないか。
おれは仕事で台東区にある医薬品問屋に納品したついでに、近くの公衆電話からその会社に電話した。
「あ、あの、求人広告見たんですが・・・・」
「それでは面接に来ていただきます。いつ来れますか?」
「あ、先に履歴書送らなくていいんですか」
「いいですよ。いつ来れますか?」
「あ、あの、土曜日でもいいんですよね」
「いいですよ。じゃあ今週の土曜日でいいですか」
そして1月の今にも雪が降り出しそうな寒い土曜日、おれは面接に出向いたのだった。

つづく⇒転職日記|業界新聞の面接…②

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