いじめ? -42歳の新人マネージャー1

社畜日記

自分の子供には「パパはたいていのことは怒らないが、弱いものいじめ、猫や犬にひどいことしたら家に入れないからね」と常々言い聞かせてきた。

「いじめられてる子がいたら仲良くしてあげなさい」

子供の残酷さは正直だから簡単にいじめに加担する。
自分が小学校の時もやはりクラスに一人くらい仲間外れになってしまう子がいた。その時自分が助けてあげられたかというとそんなことはない。やはり多勢の側に立っていた。その反省もあり、せめて子供にはそうなってほしくないという勝手な期待でもある。
そして大人になってからもやはりどこの世界にも「いじめ」に類するものが存在する。会社であれば業務上の「責任」を誰かに押し付けて自分は安泰でいたいとか単なる嫉妬、という理由がほとんどではないか。
「プロジェクトがうまく進まないのはあいつが仕事できないからだ」
「営業成績が伸びないのはあいつが足引っ張ってるからだ」
「あの子ばっかりひいきされて不公平だわ」

「陰口はいじめの始まり」という言葉があるが、陰口など程度に差はあれ、あらゆるところで横行している。
いじめで自殺をする子供たちのニュースがあるたびにものすごく不快で憤りを覚える。周りのやつらは何してたんだと。親はなぜ学校に行かせたんだと。なぜもっと早く警察に行かないのかと。

昨年末、ちょっとしたいきさつがあって私のチームに42歳の新人が「プロジェクトチームマネージャー」として中途入社してきた。中小企業や大手企業で広告宣伝やマーケティングをずっとやってきたという。ただ、業務的にはわが社のようなものは初めてだ。
私は彼が入社した時に
「この会社は少人数で回しているので椅子に座って進捗状況を眺めているだけなんていう管理職は無いから、まず全速力で業務を覚えてほしい。部下と一緒になって自分も動かないととても回せる量ではない」とアドバイスをした。

しかし1カ月もたたないうちに社内での彼の動きに違和感を持つことになった。
まず基本的に動きが全て老人のようにスローなこと、言われたことをすぐ忘れること、まだやってないことを「やりました」と言ってしまうこと、広告宣伝やマーケティングの知識がゼロに等しいこと、さらに部下との接し方は管理職としての経験があるとはとても思えなかった。

一番最初にあれ?と思ったのは、DM用の封筒のデザインが制作会社から出てきたとき。
「誤植がないかどうか校正して。それからビジュアル的にこうした方がいいというのがあれば遠慮なく言って」と彼に校正原稿を渡すと、ほんの数秒で「見ました」と返された。
「え?文字とか見た?ホントに校正したの?」
「え、ああ、そういうことですか・・・」

そのあと、イベント用のポスターのデザイン案が出てきたときにも「いろいろ意見を言って」と促したが
「んー文字がちょっと小さいですかね・・・」
「いやいや、そういうことではなくて、写真はこう入れた方がいいとか、色はこうした方がいいんじゃないかとか、キャッチの入れ方はこれでいいのかとか、そーゆーの何かないの?」
「いや・・・特に・・・」

何度も展示会に出展したことがあり、その時の責任だったという。
「なんていう展示会に出てたの?」
「えーと、名前はなんていったかなぁ・・・」

広告宣伝部畑で来たというので
「安くてセンスのいいデザイン会社どこか知らない?」
「いやぁちょっと・・・広告代理店に任せていたので」
一事が万事、こんな調子だった。

しばらくして彼は
「この会社には日報とか週報とかないんですか」と聞いてきた。
「別のチームではやってるところもあるよ」
「そういうのが無くてどうやって管理するんですかね。うちでもやろうと思うんですが」
「君が今までいた会社ではそうやって上手く管理できていたのであれば、やればいい。でも反発もあるかもよ」

彼はチームメンバーにメールを送った。

「これから毎週末にみなさん週報を出してください。今週やったことベスト3と来週やること、上にエスカレーションしてほしいことなど書いてください。展開します」

エスカレーション?展開?

ふーん、そういう言い方もあるんだ。
しかし彼のやったことというのは、週末に集まった各メンバーの「週報メール」を全部つなぎ合わせて全員に「展開しました」と送ってくるだけだった。毎週会議はやっているのに、今更こんなことして何の意味があるのだろう。
「エスカレーション」というのは多分上層部に掛け合う、というような意味だろうが、全く業務内容も理解してない彼がやっても単なるメッセンジャーにしかならなかった。

最初は彼に協力的だったメンバーも「何かおかしい」とだんだん気づき始めていた。

つづく⇒いじめ?-42歳の新人マネージャー2-

さらに続く⇒いじめ?-42歳の新人マネージャー3-

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