1日遅れで「聖地」入りした我々の最初のダルシャンだ。
いよいよリアルサイババが見れるのか。
いやがおうにも期待が膨らむ。その日は理由はわからないが、アシュラムとは別の場所でダルシャンが行われることになった。と言っても歩いてすぐのところにある屋内施設だったが。
日本人ツアー49人は行儀よく歩いていきその建物の近くまで行くと、すでに外国人がたくさんの行列を作っていた。これだけいるとなると我々の会場内での位置は相当後ろの方だろう。
並んでいるとまた紅茶売りがタンクを背負ってやってきたので、何の躊躇もなく1杯購入した。
するといかりくんは「よくそんなの飲めるな」とまじまじと見ていた。
「なんで?」
「だってどんなふうに作っているかとか分からないじゃん」
要は不衛生かもしれないよ、ということなのだろう。ホントはそれぐらい疑ってもいいんだろうが、危機管理意識の低いおれはへっちゃらで飲んでいた。
十数メートル離れたところに公衆トイレが見えたので、インド人ガイドに「トイレに寄ってから行く」と告げると「入れますかねえ」と言うではないか。工事中か故障中なのかと思いきや、その手前まで行って納得、というか絶句した。
ちょっと驚くほどの悪臭が漂っており、臭いだけでなくその光景を見たらそのまま突入できる人間がこの地球上に存在するのか、というありさまだった。
ごくごく単純で素朴な疑問として、なぜインド人は「便器」というものがあるにも関わらず使わないのか、なぜ便器以外のところでも構わず用を足してしまうのか。
そんな驚きを抱えつつも列が進み、ついにその屋内施設に入った。何百人いたか分からないが、みんなスタッフ(?)の指示に従い前から順番に座っていった。日本人たちは来るのが遅かったから当然最後列の方だった。これでは前の方まで見えないじゃないか。会場内はインドの歌がにぎやかに歌われている。このダルシャンというのは、神をたたえる歌をみんなで何十分も歌い、それが終わるとサイババが登場し、お説教(?)を行う、という流れだ。
全員が座ってもなお歌は続いていた。
サイババはいつ出てくるんだろう・・・
おれは前方に全神経を集中していた。
まるでライブコンサートのオープニングでアーティストが出てくるのをじりじりと待っている観客のようだった。
その時だ、突然みんなが振り返ってきた。
なんだなんだ、何があったんだ?
そう、なんとサイババは前方に見えてたドアではなく、後ろ、つまり我々が座っている近くのドアから突然現れたのだ。
なんという幸運!
サイババはジグザグに日本人ツアーの前を歩いて行った。その間、確かに手紙を受け取る人と受け取ってもらえない人といた。
サイババはだんだんおれたちの方に近づいてきた。そしてまさに目の前。
いかりくんは満面の笑みで手紙を差し出したがそれはあっさりスルーされた。しかしその隣にいたおれの手紙はしっかり受け取っていった。なんか試験か審査に一発合格した気分だ。あとでインド人ガイドが言ってたが
「1回で受け取ってもらえることはあまりないんですよ。大抵何度か書き直してやっと受け取ってもらえるのが普通なんですが」。
おれの隣にいたにもかかわらずに受け取ってもらえなかったいかりくんはかなり不服そうだった。
「きみさあ、お願い事ばっか書きすぎたんで見透かされちゃったんじゃないの?」
「いや、おれはこのまま明日もチャレンジするもんね」
本当はこのアシュラムで4日間滞在するはずだったが、1日出遅れたので3日間の簡易霊性修行が始まった。
つづく
聖地巡礼の旅 第一部
聖地巡礼の旅 第二部
聖地巡礼の旅 第三部
聖地巡礼の旅 第五部
コメント