野球を知らないコーチ

少年野球
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子どもが野球を始めて1年くらい経ったころ、急に「行きたくない」とぐずるようになった。確かに毎週土日、朝から夕方まで練習しているので子どもなりにも「休み」というものがない。
そもそも好きで野球を始めたわけではなく、周りの友達がみんなそのチームに入っているから入っただけなのだ。
子どもの自己防衛能力とはたいしたもので、土曜日前日に我が子は喘息になったり中耳炎になったり熱を出したりと、実に都合よく病気になった。
そんなに行きたくないならやめてもいいと思ったが、妻はもう少しやらせたがった。

しかしおれが練習のお手伝いに参加してからというもの、頻繁にお手伝い要請が来るようになった。
そしていつの間にか、コーチでもないのに毎週当たり前のようにおれは子どもの練習に同行するようになっていた。子供も父親がいるとうれしいらしく、ぐずったり病気になることも無くなっていった。
今まではただ見学していただけだったが、今や球拾いは当たり前でグランド整備から移動時の子どもたちの運搬(荷物か)、たまに子どもに交じって守備までやるようになってしまった。子どもたちは当たり前のように「コーチぃ!」とおれを呼ぶようになっていた。
しかし野球未経験で「コーチ」と呼ばれるのはやはり抵抗がある。
なんの指導もできないのだ。空振りをしている子にもゴロが取れない子にも、なぜできないのか、どこが悪いのかがまったくアドバイスもできない。そもそも自分だってフライもゴロも捕れないのだ。これはもどかしい。かなりのフラストレーションになる。しかし間違ったことを教えてはマズいので黙っている。おれにできることは「大丈夫、できるできる」とか「おしい、もうちょっとだ」とか何の根拠もない声をかけてやることぐらいで、それだって子どもたちは全然必要としてないかもしれない。

そんな疑問を持ちつつも参加し続けていたら、新しい発見があった。
ある日、おれはまた紅白戦の補充に入った。もう今更うろたえたりしない。
しかしこの日は「ショートに入ってください」と言われた。実際その位置に立ってみると、バッターボックスから近い。こんな至近距離から自分に向ってライナーなんか打たれたらたまったもんではない。子供の力とはいえ、タイミング良く球に当たれば結構なスピードで球は飛んでいく。当たったら「痛てぇ」くらいでは済まないだろう。よく子供たちはこんな危険なところに立てるもんだ。しかも時々「前進守備!」とか言って、内野手が全員そろそろと詰めるときがある。こんな危険なことがあるだろうか。自分の子供は絶対にショートなんかに立たせたくないと思った。しかし後で聞くと、もっと危険なのはサードだという。
よく監督が「(ボールは)体で止めろ!」とか叫んでいるが、冗談じゃない、こんなの体で止めてたら命がいくつあっても足りない。軟球と言えど、ボールは相当硬い。誰が野球なんか考えたんだ。

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