第四部 コロナウイルスは今もあなたの隣にいる

火曜日
いよいよPCR検査、それも今話題のドライブスルーPCR検査だ。案内用紙には「必ずお車で、時間ギリギリにお越しください」と書いてある。車で「時間ギリギリ」というのもなかなか難しいが、言われたとおりにするしかない。
指定された時間は13:30から。家からそこまでは空いていれば15分もあれば着いてしまう。

朝から熱もなく、味覚異常も呼吸も特に違和感はない。だから大丈夫だ!と午前中は何度も頭の中で反芻(はんすう)していた。
「こんなに元気なんだからコロナであるはずがない!」
でないとおれは4人を死に追いやることになるのだ。
「検査を受けなければ、白黒ハッキリさせなければ今後何かが起こってもおれのせいだとは証明できないよな・・・」もうすでにおれの心理は犯罪者の気持ちになりかけていた。
「ここまで来て逃げるわけにはいかない、現実としっかり向き合え!」と自分の中の善良な自分が叫んでいた。13:15、ついに意を決して家を出た。

そして予想通り5分前に現地に到着した。厳密な時間指定のせいか順番待ちの車の列もなく、スムーズにテントの前まで誘導された。
書類を渡そうと車の窓を開けると

「窓開けないで!」と防護服の職員が叫んだ。

あわてて窓を閉めると、職員はスケッチブックを広げておれに見せた。

「番号の記載されている封筒を見せてください」

と書かれていた。その封筒を車の中から見せた。

職員はスケッチブックにのページをどんどんめくっていった。

「○○の書類を出してください」

「保険証をその用紙の隣に提示してください」

そして最後に

「窓を開けて正面を向いたまま顔を上げてください」

おれは窓を開け、上を向いた。

「はいそのまま前を見ていて。もう少し顔を上に向けて」

とここはもちろん肉声。窓の外から手が伸びてきて、おれの鼻の中に細い棒を突っ込んで終わり。これはインフルエンザの検査と同じ要領だ。

「結果は早ければ2日後に電話で連絡します」

と言われ解放されたがあっけないほどあっという間だった。問診も検温もない。そしてあと2日間はまた自宅軟禁だ。

検査に出かけてからあっという間に帰ってきたおれを見て、鬼嫁は
「どうしたの?検査行かなかったの?」
と疑った。
「結果は?え、すぐに出ないの?じゃあ結果出るまで部屋から出ないでよね、きっ!」
この日はもう熱がぶり返すこともなく、体感的にも何も問題ないように感じていた。
しいて言えば何もやる気が起こらなかった。もっと正直に言えば不安で何も手につかなかった、と言った方がしっくりくる。
検査を受けてしまった以上、2日後には白黒はっきりしてしまう。
2日後・・・こんなじれったい待ち時間が今まであっただろうか(いくらでもあったよな)。
ここからおれの永遠の2日間が始まった。

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第二部 コロナウイルスは今もあなたの隣にいる

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