龍を見た人⑥~鞍馬寺でサナトクマラに会う

パワースポット

ひたすら山頂にある鞍馬寺を目指しおれは鞍馬山を登り続けた。
「山頂」というのは正確ではないかもしれない。正しくは「中腹」くらいなのだろうか。
とにかくおれはひたすら登って行った。
途中でカラスが飛んできた。「神社仏閣でのカラスは歓迎のしるし」と言われるが、おれも歓迎してもらえているのだろうか。
あちこちから湧水が流れ出ていおり、ところどころに小さな小川を作っていた。

山登りが嫌いなおれでもさすがに今回は一生懸命登って行った。幸い道はわりと歩きやすく、曇り空ではあったが雨も降ってこなかった。
やがて最後の階段を登り、ついに鞍馬寺に到達した。


しーーーーーーーーーーーーん

相変わらず誰もいない。
鞍馬寺は山の上に静かにたたずんでいた。
聞こえるのは鳥の声だけである。なんだこの圧倒的な静けさは・・・。

寺の前の石畳の中にはかの有名な「六芒星」があった。



ここに向かって宇宙からエネルギーが集中して降り注いでいるという。
大抵の人はここに立って空を見上げ、空に向かって両手を広げるらしい。
ギャラリーがいたらちょっと恥ずかしい光景だが、誰もいないのをいいことにおれも同じことをやってみた。
六芒星の中に立ち、空を見上げ、両掌を空に向かって差し出した!

「おお!ものすごいパワーだ!!!」

・・・とはならなかった。
いやそんなはずはない。ここははるか650万年昔、金星からサナトクマラが降り立った聖地なのだ。
おれはもう一度手を空に向けた。

待つことしばし・・・
「おお!こ、これが宇宙エネルギーか!」

そう感じたかったが特に何も感じない・・・。

しかしまあそれを差し引いても、周りに誰もいない早朝の鞍馬寺の境内は最高に気持ち良かったのは事実である。もうエネルギーがどうだとか歴史がどうだとか抜きにして、とにかく単純に気持ちいいのだ。
鞍馬寺の本堂があり、その後ろに広がる緑の木々のコントラスト。

そんな光景をぼうっと眺めていると、本堂の中に入れるということに気がついた。
本堂の横に入り口があり、そこから自由に入れるようになっていた。
中に入るとそこには・・・何があったか全く覚えていない。
というのには訳がある。

本堂を通り過ぎると、出口と地下へ降りて行く階段があった。下へ行ってもいいんだろうか。
見張りもいなかったのでそのまま階段を降りて行くことにした。
地下は薄暗く、というかほぼ真っ暗で、少し先がぼわっと明るくなっていた。
今思い出すとかなり怖い光景で、普通だったら逃げ出す場面だが、なぜかフィルターがかかったかのように恐怖心が半減されていた。
そのまま進むと暗闇の中にろうそくが3本、火がともされていて、ほのかな明かりの向こうに何かの像が安置されていた(と思う)。
そして線香が用意されていて、「3本供えるように」というようなことが書かれていた。
そこにあった線香にろうそくで火をつけ、鉢にさしてみた。
後で考えれば実に不気味な光景だ。
ホラー映画は超苦手で、ただでさえ怖がりのおれに何でそんな行動ができたのだろう。
しかしまだ続きがあるのだ。


暗闇の中でその少し先に、この何かの像の横に入っていくような細い通路を発見した。
相変わらず十分薄暗く、灯篭のかすかな明かりだけが頼りだった。壁には陶器のようなものがびっしりと並んでいたが、誤ってひっかけたりしたらどうするのだろう。この暗さでは十分可能性がある。
おれは気をつけながらゆっくり進んだ。こんなとこ入って行っていいんだろうか。
異世界の迷宮にはまり込んで戻ってこれなくなったらどうするんだ。

そこは回廊のようになっていた。誰もいないので物音ひとつしない。
すると今度は突然薄明りの中に3体の像が現れた。
本来であればここは絶叫して大パニックになるところだ。
寺の地下のものすごい暗闇に突然3体の人型像がぼわっと現れたのだ。
なぜ逃げないおれ!

かなり驚いたがやはり恐怖心が何かにカモフラージュされていたかのように妙に冷静に3体の像をしばらく目の前で眺めていた。
この像は「魔王尊(サナトクマラのこと)」「毘沙門天」「千手観音」だそうだ。
「これがサナトクマラ・・・」
想像してたのとはずいぶん違ったが、この謎の地下室での遭遇のインパクトは強烈で、最初に見たはずの本堂(地上)に何があったのかさえ全く覚えていないのだ。

残念ながらスマホで写真を撮る余裕が全くなく、そもそもそんなことしていい雰囲気では全くなかったが、世の中にはやはり勇気のある人もいて、画像をWEBにアップしている人がいた。

※「鞍馬寺 地下」で検索するといくつも出てくる

ようやく地下から出てきたおれは、次なる目的地に行かなければならない。
サナトクマラを祀ってあるという「魔王殿」だ。
貴船神社に向かう途中にあるらしい。でもさっきサナトクラマ、見たんだけどな・・・。

つづく


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