超初心者が挑む富士登山⑩~誤算の始まり

富士山

「山の天気は変わりやすい」
と一般的に言われているが富士山の天気はまさに目まぐるしく変わる。
5合目から6合目まではほとんど霧の中のような状態で、Youtubeで見ていたような
「うわー景色ヤバい!」
「雲海がすごい!」
というようなものは何も見えなかった。
360度、どこまでも白いもやの中なのだ。


6合目までは樹木も多いが、これを過ぎると周りに障害物がほとんど無くなる。
富士山の山肌は「赤」くなる。
それでもしばらくすると急に晴れ間が出てきた。
太陽が出ると今度は強い日差しと凶暴化した紫外線がダイレクトに直撃する。


台風の心配はあったが今回はなんとか雨が降らない状態でスタートできただけでもラッキーと思わなければいけない。しかも6合目を過ぎたあたりで雲が切れることが多くなった。
過酷な登山の中で常に足元を見ながら進んでいたのでなかなか景色を楽しむ余裕もなかったが、それでも時々とる休憩で見る景色はさすがに迫力があった。

障害物が何も無いのでとにかく空が広い。
とてつもなく広い。まさに360度パノラマだ。
雲海となって下方に広がる雲も大迫力だった。

7合目の山小屋に名物のクリームパンがあると聞いていた。
そこで食べるクリームパンがとてもおいしいという話だ。
それはあくまでも疲れ果てた中で食べるから美味しく感じるのだろう。
だったら何も300円出して山小屋で買わなくてもいいだろう。
そこであらかじめコンビニでクリームパンを買って持っていった。
それを同じように7合目の山小屋の休憩所で食べてみたが、どこで食べてもやっぱり普通のクリームパンだった。

辺りがだいぶ薄暗くなったころに本日宿泊する蓬莱館に到着し、簡単なチェックインをした。
「(私が)一番最後ですか?」
「いえ、あと4組ほどがまだ到着していません」
ほう、もっと遅い奴がいるのか。

泊るスペースは簡易カプセルホテルといった感じで、寝袋と小さな枕があるだけだ。
コロナ対策で隣りの人とはベニヤ板で仕切られてる。
コロナの前はこの仕切りは無かったので、知らない人と肩を寄せ合いながら寝なければならなかったそうだ。


その狭いスペースで荷物を少し整理してみた。
そもそもなんでこんなに重たいのだろう。

持ってきたものを広げると
・水&スポーツドリンク(合わせて2ℓ)
・セリー飲料(4個)
・行動食(チョコレート、ミックスナッツ、シリアルバー)
・着替え(雨が降った時のため)
・防寒用のフリース&ウルトラライトダウン(ノースリーブ)&ウインドブレーカー
・レンタルのレインウェア(上下)
・レンタルのストック

あとは傷薬やバンドエイド、目薬、耳栓などの小物だけで、どう見ても必要最小限だ。
リュックを持ってみると、やはりこれが重い。
このレンタルリュック、有名ブランドの品だったが今時軽量素材なんていくらでもありそうな気もする。
そんなことを考えてると
「夕食の準備ができました」
とスタッフが呼びに来た。
話には聞いていたカレーライスだ。
「山小屋で食べるカレーは最高に美味しかった」とよく経験談で聞くが、正直なところただのレトルトカレーであり、それ以上でもそれ以下でもなかった。



食事を済ませ、外に出てみた。
今回の富士登山でのもう一つの期待が「満天の星」を見ることだった。
日本一高い場所にいるんだから天の川とかすごいんじゃないか。
以前社員旅行で行ったオーストラリアの高原で見た星空はまさに「満天の星」で流れ星が飛び交っていた。それに匹敵するものがきっと見れると期待していた。
しかしその期待はあっさり裏切られた。
普通なのである。
9月なのにオリオン座がきれいに出ていたが、「満天の星」も「天の川」もそこには無かった。

夕食の後、スタッフの人に
「ここから頂上までどれくらいかかりますか」
と聞いてみると
「うーん、人にもよりますが4時間くらいですかねぇ。でも渋滞とかあったらもっとかかりますかねぇ」

頂上付近の渋滞はもちろん知識としては知っていた。
しかしご来光は吉田コースならどこからでもきれいに見えるという話だったので、別に頂上から見ることにはこだわっていなかった。
むしろ問題は帰りのバスの時間だ。
「11時までに下山してください」と現地係員は言っていた。
経験者の話では、「下山はあっという間ですよ」とも聞いていたし、確か早い人で3時間半とかの記憶がある。
余裕をもって4時間かかるとしたら、7時には下山をスタートしなければならない。
逆算していくとやはり6時くらいには頂上にいなければならないだろう。
さらに逆算していくのだが、おそらくおれの脳は酸素不足で簡単な計算ができなくなっていたのだろう。
ここでおれは時間の大きな読み間違いをすることになる。

つづく

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