超初心者が挑む富士登山⑪~富士山の夜明けは壮大なエンターテイメントだった

富士山

夕食後、寝袋に入り仮眠体制に入ってから、何か自分の時間配分がおかしいんじゃないかとずっとモヤモヤしていた。

この山小屋は頂上までの中間地点にあるのだから、休憩考えなければ理論上3時間半で頂上に着くはず。しかし当然休憩とか渋滞とか考慮して4時間かかると仮定しよう。
夜中の2時半に山小屋を出発すれば6時半には頂上に着くはずだ。
そこで30分過ごし、7時に下山開始。
完璧なスケジュールだと思っていた。

当初の計画
夜中の2時半出発→(4時間)→朝6時半頂上→(30分滞在)→7時下山開始→(4時間)→11時下山


しかし
「そんなにうまくいくだろうか・・・」

だんだん不安になってきた。
「頂上まで4時間というのは甘いな。5時間は見るべきだ」
そこで1時間繰り上げて、夜中の1時半に出発することにした。

今思えばよく頑張ってそこに気づいたな、と思えなくもないが、実はもっと大きなトラップがあることにはこの時点で全く気づいていなかった。

夜中の1時に起き、予定通り1時半に山小屋を出発した。
昨日の岩場と違い、今日の出だしはわりと歩きやすい道ではあった。
しかし何といっても標高3000mを越えているのだ。
3000m越えると高山病のリスクも一気に高まるという。
道は歩きやすいが空気が薄すぎて歩きにくい。
なのでどうしてもちょっと歩いては休み、またちょっと歩いては休み、の連続になる。
真っ暗な道を、頭にくくりつけた小型ライトで登っていく。周りの人も同じようにライトをつけもくもくと頂上を目指している。

途中にうずくまってる人も少なくなかった。
急に暗闇の崖下に向かいに思いっきり嘔吐してる人もいた。
途中で立ち寄った山小屋のトイレには
「トイレの中で絶対に吐かないでください。吐くなら外で吐いてください」
と貼り紙がしてあった。それくらい吐く人が多いのか。富士山のトイレはバイオトイレになってるので勝手に吐かれたら困るのだろう。

幸いなことに、おれには頭痛とか吐き気とか二日酔いのような高山病の症状はその時点でも出ていなかった。しかし標高が上がるにつれ、酸素の薄さはひしと感じていた。と同時に、昨日は感じなかった「寒さ」が出てきた。風が冷たい。
おれはユニクロのライトダウンとウインドブレーカーを着たが、それでも寒くてフリースも出した。

やがてあたりがだんだん明るくなってきた。
気がつけばもうライトはいらないくらいになってた。
今まで足元ばかりを見ていたが、振り返って日の出の方向をみるとそこにはまさに夜明けの太陽が出ようとしていた。
それは今まで見たことのないような巨大なスケールの朝焼けだった。

登山道からご来光を見るためにすでにカメラをスタンバイしてる人もたくさんいる。
おれもその場でしばらく見ていることにした。

太陽はしばらく雲に見え隠れしていたが、だんだんその姿を現し、そして一気に上って行った。
これは大自然の驚異であり、壮大なエンターテイメントである。
多くの困難試練を克服し、ここまで来なければ決して見ることのできないショーだ。

この一大イベントが終わると、みんなそれぞれ頂上への行進に戻っていった。
いつのまにかもう頂上が見える位置までたどり着いていたのだ。
しかし話はそんなに簡単ではなかった。

つづく


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