誤審だらけの公式戦

少年野球
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少年野球と言えど、それは公式戦だった。
一応その成績によって地区大会だの県大会だのと、チームの順位を左右する大会だ。
その日は監督、助監督とおれの3人しか大人はいなかった。
「○○さん、三塁お願いします」
「え、これ公式戦ですよね。さすがにマズいでしょ」
「いや、人がいないんでそんなこと言ってられないんですよ」

確かに人がいない。しかしいくら何でもおれがやるわけにはいかないだろう。知識不足に経験不足。そんな人間が公式戦の審判なんかやっていいのか・・・しかし確かに人がいない。
試合開始の時間がどんどん迫ってくる。
いないものはしょうがない。あきらめておれはマウンドの方へ向かった。
最初に主審の元に塁審が集まる。そこで主審が何やら専門用語で留意事項を各塁審に伝える。

「インフィールドの時はこうやって合図をしてください。インプレーの時は・・・」

何を言ってるのかさっぱり分からない。
そのまま試合が始まった。
おれは3塁の塁審を任された。
走者が三塁まで来ないことをひたすら祈ったが、こういう時に限ってじゃんじゃん3塁まで攻め込んでくる。ちなみのこの日、3塁側は相手チームの保護者の席だった。

途中、セカンドにいた奴が3塁めがけて突進してきた。盗塁か!
うちのチームのやつだった。なんでわざわざ突っ込んでくるんだ。2塁でおとなしくしてろよ!
すかさずボールも飛んでくる。
ボールが先かランナーが先か・・・

これが微妙なタイミングだった。セーフにすればうちのチームが有利になり、アウトにすれば相手チームが有利になる。しかし今の状況でおれに正確なジャッジなんてできるはずもない。
ちなみにテニスでは、草テニスの試合は基本セルフジャッジで審判なんかいない。で、怪しい場合はセーフにするのがマナーだ。同じ球技だからそんなに違いはないだろう。
おれは叫んだ。

「セーフ!」

するとおれの背後に陣取っていた相手チームのママ連中がざわめき始めた。

「えー今のどう見てもアウトよね」
「判定おかしいんじゃない?」
「なんであれがセーフになっちゃうの?」
「ちょっとひどいんじゃない?」

おれの背中越しで言いたいこと言ってる。ここでおれはそいつらを振り返る勇気はなかった。
もともと自分の判定に自信があったわけではない。もしかしたらこのママ連中のほうがおれよりもはるかに野球に詳しいかもしれない。
おれはますます萎縮し、いやな汗が背中を流れていた。
だから素人に審判なんかやらせちゃダメなんだ。選手がかわいそうだ。

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