最後の演目はおとうさんたちが参加することになっていた。
と言っても内容は簡単なもので、子供と両手をつないで輪っかを作り、前から来たでっかいボールを後ろの親子にパスするだけだ。
おれはビデオカメラを妻に渡し、「ちゃんと撮れよ」と捨てぜりふを吐いて集合場所に向かった。
おれたちのいる場所は妻からわりと近いポジションだったはずだ。
あっという間にこの演目も終わり、オレは妻のところへ戻った。
「どうだ、ちゃんと撮れたか？」
すると妻は
「これ、全然ダメ！動かないんだもん！」
そんなはずはない。おれは録画ボタンを押してみた。
ちゃんとRECマークの赤い表示が出る。
「ちゃんと動くぜ」
「それ、分かりづらい！使い方がよくわかんないのよ！もっとちゃんとしたの買ってよ！」
妻は自分の失敗をビデオカメラのせいにして逆ギレしている。そしてその分かりづらいビデオカメラを買ったおれが悪いというのだ。
「分かりづらい」って、ついこの間も下田の海で撮りまくっていたじゃねーか。
だいたい幼稚園は一般人のビデオ撮影を禁止してしまえば朝の5時半に場所取りすることもビデオ撮影のデキでもめることもないのだ。
そうだ、幼稚園が悪いのだ！そうに決まっている！
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