神社には本物の龍いるという話⑨~野尻湖に浮かぶ謎の神社

パワースポット

当初の「龍を見る」という目的から、とにかく神社に足を運ぶに変わっていることに気づき、ますますいったい何のためにこんなことしてんだろうと気持ちが落ち始めていたが、今日は次に行く場所が決めてあった。

「野尻湖」だ。
前職では主に長野県内の特別養護老人ホームを営業で回っていたのだが、毎回「ナウマンゾウの化石が発見された野尻湖」という看板を見かけ、いつも気になっていた。ある時、思い切って仕事の途中だったが立ち寄ってみた。当時の記憶では、初めて見た野尻湖は平日で人も少なく、さらに曇り空ということもあってかその静けさがとても不気味に思えた。湖面から突然ネッシーのようなものが現れても全然不思議ではないような神秘さを漂わせていたと記憶している。

そこにもう一度行ってみたい。位置的にも戸隠神社から20kmほどで、また山を越えていくが1時間ほどで着くはずだ。さらに新しく仕入れた情報では、湖の真ん中に「琵琶島」というのがあり、なんとそこに神社があってやはりパワースポットと言われているらしい。その島に上陸するためには遊覧船に乗るか手こぎボートを借りるかアヒルペダルボートを借りなければならない。

とにかく行ってみよう。再びナビに従い山越えをしていった。


さて、「野尻湖入り口」の信号を右折し、湖畔に到着した。しかしそこは前職の時に来た場所とは明らかに違っていた。そもそも前回のルートなど全く覚えてない。

で、今回到着した場所はまさに遊覧船の乗り場があった。
意外だったのは湖畔まで近づいてもかつて見た神秘さなど微塵もなく、そこはただの地方のさびれた観光湖で、昭和に取り残されたような光景だった。


湖の真ん中のほうに確かに島があり、赤い鳥居も見えた。
そしてそこに行くには目の前の遊覧船に乗る必要がある。まさかこの暑い中、手こぎボートで行くなんてありえないし、一人でアヒルに乗るなんてもっとありえない。
「もう(鳥居だけ)見たからいいかな・・・」
おれは心の中で撤収する理由を考えていた。そもそも山の上にある湖のくせにこの暑さは何なんだ。
遊覧船の出発時刻まで20分。
「どうするか・・・」
と考えながら足はすでに車に向かっていた。
「もう無理に行くこともないだろう。早くホテルに戻ってまた戸隠蕎麦食べに行こ」
車に乗りホテルへ向かおうと走り出し、5分ほど走ったがどうもすっきりしない。

「いやいや、ここまで来たんだからちゃんと見てけよ」
という一方の心の声を抑えきれない。
時計を見るとあと10分で遊覧船が出る。今戻ればギリ間に合う。
おれはUターンし、再び船着き場へと向かった。

券売所で販売員の女に「何名様ですか」と聞かれ「一人です」と言うと、その女の動きが「え?」と一瞬止まったのをおれは見逃さなかった。
確かにこんな山奥の湖の遊覧船にいい歳した男が一人で乗るというのは絵にならない。
しかしおれにはあの神社に行くという明確な目的があるんだ!
そのためにはこれに乗るしかないんだ!
お前なんかにわかってたまるかっ!
別に何か言われたわけでもないのに被害妄想の中で毒づき、おれは遊覧船に乗り込んだ。


遊覧船は湖を一周し、最後に15分間この琵琶島に停泊することになっていた。
琵琶島にある神社は「宇賀神社」といって、730年に作られたそうだ。なんと1300年も前からあったのか。
おそらく同乗している人たちで神社目的の人なんて誰もいないだろう。おれは船が島に着くと真っ先に下船した。すぐに鳥居があり、その先はなかなか趣のある雰囲気だった。


2体の龍の像がある。
「ほうほう」と感心してる間に同乗していた家族連れのちびっ子たちがキャアキャアと押し寄せてきて、神聖なはずの境内はたちまち子供たちの遊び場と化したのだった。

つづく

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