第七話 このまま終わってしまうのか

隣人トラブル

一週間の避難を終えて我々は今日、再び我が家に戻ってきた。
裏の家に向かっている窓はすべて白い板で覆われていた。ちょっとそれは異様な光景だった。

家に入ると留守電がOFFになっていた。妻に聞くと 
「脅迫電話とか入っているといやだから切っておいた」 

なんてことを・・・もしかしたら裏の親父の息子から電話があったかもしれないのに・・・。 
それから妻は近所に菓子折りを持って挨拶に回っていた。 

今、私の手元に刑事告訴や民事訴訟のための資料が束になっている。
告訴状のサンプル書式もある。
しかしこれらの準備の前に、私は困っている。

書き方が分からないからではない。
妻が「もう何もしないでくれ」という姿勢を一層かたくなにしてきているからだ。
このまま終わらせたくないおれの闘志と、これ以上波風を立てたくない妻との間で今、かなり雰囲気が悪くなっている。

「それじゃあもうこのまま何もしない、ということか」
「そうよ」
「じゃあ裏の窓はずっとあのままか。一週間も実家に非難したり余計なお金もかかっているのに泣き寝入りか」 
「うちだけが被害にあってるわけじゃないのよ。近所もあまり波風立てなくていいんじゃないか、という雰囲気になってるの。今はみんな味方のように言うけど、うちだけいつまでも騒いでいると、そのうち今度はうちがいやな目で見られるわよ」  

では裏の窓はずっと塞いだままなのか。
我が家の日照権はどーなる。
そもそも今回の件で一番傷ついていたのは妻の心ではないか。

逆恨みが怖いというのは理解できる。
おれが騒ぐことによって、オヤジは逆恨みの逆襲に出るかもしれない。
確かに平日の昼間、おれのいないときに押しかけられたり、あるいは近所の道端で何か起こったとしてもその場におれはいることができない。
守りようがない。
「それは無責任じゃないか」と言いたいのかもしれない。
でもこのままじゃ・・・。

 そういえば市役所はちゃんと息子に連絡取ったんだろうか。担当者は
「今週中には取ろうと思ってますが、向こうもお仕事してるだろうし、うまくつながるかどうか・・・」
とか早くも逃げのセリフをはいていた。 

「どこへ行ったって近所に一人や二人、変なクレーマーみたいな人はいるもんだ」と言う意見は割と多いのかもしれない。
しかしそうやって多くの人は泣き寝入りをしているんじゃないのか。
みんなそうだからお前も我慢しろというのか。
それは我慢のするところが違うんじゃないのだろうか。
 しかし四六時中おれは家にいるわけでもない。
そのとき何かあったら・・・

最優先は家族の安全。
おれが騒いで危険がおよんだらそれは確かに本末転倒だろう。
そう言って自分を納得させるしかないのか。

つづく

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