『シーシュポス』・・・
変なタイトル、と思っていた。
英題は「The Myth」。
和訳すると「神話」という意味らしい。
そもそも「シーシュポス」というのはノーベル文学賞の作家カミュの作品「シーシュポスの神話」からとっているそうだ。
カミュというのは何となく名前は知っていたが「シーシュポスの神話」は聞いたことがなかった。
カミュの小説の話は
「神々がシーシュポスに科した刑罰は大岩を山頂に押しあげる仕事だった。だが、やっと難所を越したと思うと大岩は突然はね返り、まっさかさまに転がり落ちてしまう」
これを延々繰り返すという内容で、「不条理の哲学」なのだそうだ。
最終話まで見終えると、「不条理」というタイトルがドラマに見事に物語にマッチしていることがわかるし、よくこのタイトルをつけたものだと感心する。
『シーシュポス TheMyth』はNetflixでやっていた韓流ドラマ(全16話)だが、予告編を見て面白そうだったので見始めたものの、話が意味不明で8話ぐらいで挫折していた。
まるでエヴァンゲリオンのように話の設定が全然わからないのだ。
あれも初っ端から「人類補完計画」だの「使徒」だの「ゼーレ」だのまったく意味不明の単語と設定で訳が分からなかった。
『シーシュポス』も最終的にはその種明かしが出てくるのだが、それにしても最初はわかりづらい。
ヒロインがかわいかったのでしばらく我慢して見ていたが、半分まで来たところでやめてしまった。
代わりにあるYoutuberが『ストレンジャー・シングス未知の世界』が超絶面白いと絶賛していたのでそれを見始めた。
ところがこれがどうも面白くない。
そのYoutuberは「だんだん深みにはまり止まらなくなる。さらに第2シーズンになると・・・」と言っていたので我慢して見ていた。
しかし全8話の第1シーズンが終わった時、ただ時間を無駄に浪費してしまったという確信と後悔が押し寄せた。
ああ時間がもったいない・・・。
そこで途中で離脱していた『シーシュポス』を再び見始めたのだった。
「韓流ドラマは3話までは見てみないとダメ。1話だけ見てつまらないとか判断しちゃダメ」
と誰かが言ってたが、このドラマは10話目でやっと面白さが分かってきた。
話は2020年の韓国に、タイムマシンで2035年からやってきた未来人が”密入国”していて、それがどうしたこうしたという展開になって行くのだが、10話目くらいでようやく話の全容が見えてきた。
するとがぜん面白くなってくる。
主役の天才エンジニアのハン・テスル演じるチョン・スンウも、その相手役ヒロイン、カン・ソヘを演じるパク・シネも完全にはまり役だ。
脇役たちの演技も素晴らしいし、ドラマにもかかわらず製作には相当金がかかっていると想像できる。
かつてのどの映画、小説でもそうだが、タイムマシンものは必ずタイムパラドックスが生じ、話のつじつまが合わなくなる。
『シーシュポス』もそれは同じで、「あれ?それおかしくないか?」とツッコミどころ満載だ。
そして主人公の2020年に生きるハン・テスルと2035年から来たヒロインのカン・ソヘ。
話の流れとして当然お互い魅かれ合うわけだが、ハン・テスルの生きているタイムラインには当然まだ子供のカン・ソヘが存在している。
子供のカン・ソヘと15年後の大人になったカン・ソヘが同じタイムラインにいるのだ。
それ自体矛盾してるし、まして時空を超えて二人が結ばれるこなど起こり得ない。
似たようなケースは前にもあった。
韓国ドラマ史上、No.1の最高傑作『ホテルデルーナ~月明かりの恋人』。
これは人間と幽霊の恋だ。
これも人間と幽霊では結ばれようがない。
韓国ドラマ史上、No.2の傑作『医心伝心〜脈あり!恋あり?〜』ではヒロイン女医と朝鮮時代の鍼灸医の時空を超えた恋で、これも実るはずがないパターン。
『愛の不時着』に至ってはなんと北朝鮮のエリート軍閥青年将校と韓国の財閥セレブの恋で、これも絶対に成就不可能な設定だ。
日本のドラマの脚本であればどちらかが消滅して残された方は打ちひしがれ、悲恋となるのだろうが、韓国ドラマはそんなありきたりの結末にはしない。
もちろん「そんなわけないじゃん」という終わり方だったりするのは多少否めないでもないが、悲しい結末でなければそれでいいのだ。
今回の『シーシュポス』の時空を超えた二人の結末はどう決着をつけるのだろう。
最終話を期待して見ていた・・・
「???????」
全然意味が分からない。
なんだこの終わり方は。
本当に意味が分からないのだ。
ネット上にも「結末の意味わからん!」という記事や、Yahoo!知恵袋にまで最終回の意味を質問している書き込みがあった。
2021年の作品だから第2シーズンへの布石、というわけでもなさそうだ。
思い起こすと最終話近くでは急に現在・過去・未来に行ったり来たりしていた。最初の頃は時空を移動するのは相当大変なことのような描写だったのに、最後の方ではまるでどこでもドアのように簡単に移動していた。
もしかしたら原作者は結末の仕方まで考えずに制作に着手したのではないだろうか。
しかし結局いいエンディングの絵が最後まで浮かばず、なんとなく視聴者を煙に巻く終わり方にしちゃったんじゃないだろうか。
かなりモヤモヤする結末だが、それでもこの作品は「面白い!」と断言できる。
しかし現実問題として、タイムパラドックスがある以上タイムマシンは絶対に開発されることは不可能だと思っていた。
同じタイムラインに同じ人間が二人いるなんてことがあるはずがない。
が、AIの答えは違っていた。
「タイムパラドックスがある以上タイムマシンの開発は不可能だよね」とAIチャットに聞くと、
「ハードルは高いものの、まったく不可能と断言はできない」
Chat GTPもGeminiもスマホのAIチャットくんも皆、否定はしないのだ。
タイムパラドックスの問題に対しては
「過去に干渉しても別の平行世界(パラレルワールド)が生まれる、という考えもあります」
パラレルワールドを出してきたか・・・。
コメント