便潜血陽性⇒大腸内視鏡検査⇒がん発見⇒余命宣告
おれの頭の中では単純にこのような図式が出来上がった。
12月の暮れも押し迫っていた時期だ。
大腸カメラというものにもものすごい抵抗感があった。
そんなもの、はたして肛門から入れていいものだろうか。
自然の摂理に反するのではないか。
できればそんなことをせずに一生を終えたい。
しかしこのまま放置したら本当に一生が予想よりも早く終わってしまうかもしれない。
どうしたものか・・・。
そもそも自分の腸の中がどうなってるのかなんてもちろん見ることもできないからわからない。
別に痛みがあるわけでもなく、便秘気味どころか極めて快便だ。
そうだ、こういう時こそChat GPTに聞いてみよう。
「年齢的なことを考えても、ぜひこの機会に大腸内視鏡検査をやっておきましょう」
と全力で勧めてきた。
「あなたの食生活、運動習慣から考えても、まず問題ないでしょうが、年齢的にもポリープがあっても不思議ではありません。ぜひ検査を受けてすっきりしましょう」
ポリープ発見⇒摘出⇒病理検査⇒がん確定⇒余命宣告
またしてもネガティブな方程式が頭の中に形成された。
その晩、おれは布団の中で考えた。
※前編はこちら
自分の両親はがんではなかったからうちはがん家系ではないと思っていたが、7,8年前だろうか、姉がまさに大腸がんで手術をした。がん家系ではないと思っていたのでこれには驚いた。
しかしよくよく考えてみると、父親の兄弟は全員がんで亡くなっており、母親の兄弟もがんでふたり亡くなっている。
これってもう立派ながん家系になるのだろうか。
いや、そもそも今、二人に一人はがんにかかると言うではないか。
確率50%でなんで自分だけはかからない方の50%に入れると思っているのか。
人はいつか死ぬ。
それは100%確実で誰でも絶対避けられないまさに「自然の摂理」だ。
しかしそれは「今考えなくてもいい遠い未来の話」だとこの歳になっても考えていた。
自分が近い将来死ぬかもしれないという実感が無いからそう思うのだろう。
しかしもし、自分の生命のタイマーが自分の想像以上に早く進んでいて、あと数年で終わってしまうとしたら…。
布団の中で、勝手にもう余命宣告をされたかのような錯覚に陥った。夜というのは人をネガティブ思考にする。
そうか、やっぱり自分も死ぬのか・・・。
苦しいのはやだな・・・。
子供はやっぱり泣くだろうか。いや、子供さえもいつかは死ぬのだ。子供死ぬのはかわいそうだな・・・。
あ、そうだ、もうすぐ死ぬなら仕事なんかしてる場合じゃないな。
もう自分の中の想像は、まるで余命1カ月くらいの気持ちになり、急に焦りだした。
「とにかく明日、大腸検査のできる病院を探そう」
翌日、ネットでいろいろ検索していく中で、わりと近くて評判のいいクリニックを見つけた。
さらに年内に診察の予約も取れた。
まさに年末の押し迫った頃、おれはそのクリニックを訪れた。
検査前診察というやつだ。
医者は
「健康診断で陽性だったのね。じゃあ看護師からいろいろ説明あるから」
で診察は終わり。
別室で看護師からレクチャーを受けた。
「前日は3食とも”前日食”以外食べてはいけません」
といってレトルト食品のセットを出してきた。
「そして午後8時にまずこの下剤を飲んでください」
といい、ポケットティッシュぐらいのものを渡された。
中は顆粒らしきものが入っているのだが、こんなに多いのか。
健康診断でバリウムの後に渡される小さな錠剤とはわけが違う。
「そして当日はこの下剤です。これに水を2リットル入れ、よく混ぜて溶かしてください。一回180ccを15分かけて飲んでいきます。最低でも1リットルは飲んでください。ただし1.5リットル以上は飲まないでください。最終的には便が透明になります。この状態にならないと検査できませんので」


大きなもやもやを抱えながらの年越しとなった。
そうだ、どこかの神社に行っておこうか・・・いま、いまはどこも初詣で賑やかなんだろう。
しかし色々聞いていくと、「大腸カメラやった」という人が自分の周りにも結構いることが分かった。
そして皆同じように「カメラ自体はそうでもないけど下剤がキツかった」と証言していた。
じわじわと日にちが過ぎ、検査日が迫ってきた。
万全を期すために2日前から消化に悪いものや食物繊維は控えるようにした。
いよいよ検査前日。
意外に美味しい前日食を食べ、夜8時にまず最初の下剤を飲まなければならない。
プロテイン用のシェイカーで水に完全に溶かした。

見るからにまずそうな雰囲気で、一気に飲むしかないと思ったが実際口の中に入ると意外にそうでもなく、「濃厚ポカリスウェット」といった感じだった。
しかし飲んでから数時間経ってもまるで便意は無く、ほんとに効いてくるのか疑わしくなってきた。
そのまま早めに寝てしまったが、この下剤は夜中の2時ごろに俄然力を発揮しだした。
突然おのれの体に何かが起こりつつあることを脳は素早く察知し、「今すぐトイレに行け!今すぐだ!」と体に緊急指令を出した。
トイレに行くと、まさに腸の中のものが全部出たような、ある意味爽快感すらあった。
翌日、いよいよみんなが「キツい」と言っていた下剤1.5リットルだ。
朝に9時に飲み始めスタートと指示されていた。
言われたとおり、水を2リットル注入し、白い液体も混ぜ、何度も振って溶かした。
液体自体は透明だが、聞いた話ではこれが超まずいらしい。

おそるおそる口に入れてみた・・・。
「ん?」
もう一口・・・
「こ、これは・・・」
この味は初めてではない!
そう、例えて言えばまるで昆布茶だ。
なんだそんなにまずいものでもないじゃないか。
これなら1リットルくらい楽勝だ。
しかし目的は1リットル飲むことではなく、腸の中を空にすることだ。
昨晩の下剤のせいであらかた出きっているからか、最初の30分くらいはほとんど反応がなかった。
しかしその後は順調に便意が来るのだが、まさに固形物はもう無いようなので水分ばかりが出ていく。すでに完全に無臭ではあったが、看護師が言っていたような無色透明にはなかなかならなかった。
やがて12時近くになると、だんだん色は薄くなり、やがてほんとに透明になってきた。
検査は午後3時で、2時半に来院するように言われていた。
<まだつづく>


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