超初心者が挑む富士登山⑭～番外編

今回の富士登山、登り始めから「キツイ」と感じた。

「やめとけばよかった」
「やっぱり来るんじゃなかった」
「素人には無理」
「富士山は見るもので、登るところじゃない」
「もう二度来るもんか」

そんな言葉が何度も頭の中でリフレインしていた。
このつらさは完全に想像を超えていた。
この一カ月、毎日富士登山をした人のYoutube動画を見続け、なかなか手ごわそうだということは理解しているつもりだったし、甘く見ていたつもりもない。
しかし「まさかここまでキツイとは・・・」というのが率直な感想だった。
その一番の原因は
「酸素の薄い状態で重たいリュックを背負い、険しい山道を登っていく」ことの予想を超えたキツさだった。これは実際にやってみた人でないと分からないだろう。
高尾山でどんなに練習しても、高尾山で高山病になる人はいない。
登山用リュックを持ってないので重たいものを背負っての練習はしなかったが。

今回の吉田ルートは登る道と下山道が分かれていて、いわば一方通行なのでそうおいそれと途中で引き返すことができない。だから一旦スタートしてしまったらよほどのことが無い限り途中で引き返すことができない。

7合目からの岩場は「みんなホントにここを通って行ったのか？」と思うような危険さを感じた。
非力な女性や子供や高齢者がここを登って行けたのか極めて疑問だったが、まあここで引き返したという話も聞かないからみんなちゃんと登って行ったのだろう。

今回は幸運にも雨には降られなかったが、登山中の疲労困憊（こんぱい）の中で、もしこれで雨でも降っていたらたまったもんじゃないなと思った。
雷でも鳴ろうものならもはや絶望の境地だろう。
つくづく雨が降らなかったことに感謝した。

そして家に帰った翌日、体中がきしむ筋肉痛になった。
2日目、体はかなり楽になった。
3日目、ほとんど疲れは解消した。
そして4日目・・・
「富士宮ルートで行ったらどんな感じだろう」
「ほかの山小屋はどんな感じなんだろう」
「もっと時間に余裕のあるツアーはないだろうか」
などと考えてる自分がいた。

翌週、別の用事で越谷レイクタウンに行ったが、今までだったら絶対に入ることのなかったmont-bellショップに入って「あ、このリュックいいなぁ」とかVictoriaのとアウトドアコーナーで「登山靴とまではいかなくても、大人なんだからトレッキングシューズくらい持っていてもいいんじゃないか」と試着してみたり、ワークマンで新発売だというレインウェアを試着してみたり・・・あれ？
おれは一体何をやってるんだ・・・。

登山中や下山したばかりの時は疲れすぎていてよくわからなかったが、少し時間を置くと富士山で見た様々な光景が甦ってくるのだ。
あの独特の空気と360度のパノラマ、あれは富士山でなければ経験できない。

富士山は登り始めると、人を寄せ付けない「厳しさ」を突きつけてくる。それがずっと続くのだが、途中で見る雲海や地上の風景やご来光はその辛さに耐え忍んだ者たちへのご褒美のように「暖かさ」を感じる。
大げさに言えば、富士山がまさに「意志」を持っているのではないかと錯覚する。

あと1回つづく