「『孤独のグルメ』って番組知ってます?」会社の隣の席の女が聞いてきた。
「ただ食べてるだけなんですけど、絶対面白いですよ」
テレビ東京の食べ歩き(?)番組で、個人輸入雑貨商の井之頭五郎が仕事の途中や帰りに実際に実在する店に入り実在するメニューを食べるだけなのだが、確かに面白い。
ドラマ的な展開は全くなく本当に食べるだけなのだが、注文するのは通常の2人前か3人前頼んでおり、ギャル曽根でもないのに普通そこまで食べないだろ、と毎回突っ込みたくなる展開だ。
しかし食べながらの独り言が、これは役者の才能なのだろうが下手な食べ歩き番組よりもはるかにリアルで、その料理にすごく興味がわいてしまう。
この前の年末スペシャルで韓国・釜山の街中の店で“ナッコプセ”という料理を注文しているのを見た。鍋にエビ、イカ、タコ、ホルモン(もつ?)を入れたものでもちろん役者の演技もあるだろうがすごくおいしそうに見えた。
最初は鍋のまま食べ、ご飯にかけ、目玉焼きをのせてみたりといろいろアレンジを織り交ぜていた。
劇中の独り言でも「おお!これはうまい!」など絶賛している。
「どんな味がするんだろう・・・」
食べてみたい・・・そもそも韓国料理と言えばそうハズレることはないだろう。
それに韓国料理屋なんて都内のいたるところにある。
早速ぐるなびとホットペッパーで探してみた。
ところがメニューにこの「ナッコプセ」を記載している店がほとんどない。
いろいろ探していると、やっと1件、新大久保にそのメニューのある店を見つけた。
新大久保といえばまさにリトル韓国。
韓国料理の激戦区だ。
とある土曜日の夕方、会社帰りにその店に行き、早速「ナッコプセ」を注文した。
テーブルにカセットコンロと鍋が運ばれ、火がつけられた。
うんうん、確かにエビとイカとホルモンだ。
それに乾燥しらたきみたいのと赤いコチジャンみたいな辛みそがドカッと入ってた。
ぐつぐつ煮ること数分。
「もう食べていいですよ」と店の人が蓋を取った。
あれ、テレビで見たの、こんなんだっけ。
なんかちょっと違う気もした。
が、まあ美味しければいいか。
でもなんかあまり美味しそうにも見えないんだけどな・・・
小皿に取り、一口。
「んー辛い!」
おいしいのは確かにおいしいのだが、主人公の井之頭五郎が演じてたような
「むむむむむ!」
「おお!これはっ!」
というほど大げさな驚きは皆無だった。
実際のそれは見た目から十分味が想像でき、そして実際に食べてみても想像は大きく外れてはいなかった。
勝手に想像して期待だけがどんどん膨らんでいたのでその分期待外れ感も大きかったのだろう。
味は結構「辛口」だった。
「中辛」ではなく、ランクとしては間違いなく「辛口」だ。
個人的には「ピリ辛」程度が一番いいのだが、今回のナップコセは辛かった。
それは煮てる時から真っ赤に凶暴性をぐつぐつと醸し出していた。
辛いが不味いわけではない。
しかしこの辛さでは白飯と水は必須である。
冬なのに食べているとどんどん汗が出てきた。
まるでジムで激しいトレーニングをしているかのように頭、というか髪もぐっしょり濡れてきた。
しかし「これはカプサイシンの効果で今、まさに体脂肪を燃焼しているのだ」と何の科学的根拠もない理屈で自分を励ました。
しかし今度韓国料理店に行ったらまた注文するか、と言われれば、それほど魅力的なメニューでもないだろう。
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