理不尽運動会~前編

育児の部屋

また今年も子供の運動会だ。
朝8時に集合だが午前中で終わるのが不幸中の幸いというものだ。
昨年も撮影パパたちの壮絶なビデオ陣取り合戦を目の当たりにし、こういう親にはなりたくないものだと思いながら撮影したが、鬼嫁からは
「手ブレで見づらい」
「(子供の映り方が)小さすぎる」
など言いたいこと言われて頭に来た記憶が蘇る。

さて、今年は昨年よりもギャラリー自体が少なく感じた。とは言っても園庭を囲むラインはしっかりブルーシートが敷き詰められ、あちこちでがっちりと三脚がセットされていた。

その中に鬼嫁の親しいママ友がいたらしく
「何時に来たの?」
と聞くと
「5時半!」と返ってきた。
5時半から場所取りかよ、ご苦労なこった、けっ!とおれは心の中で悪態をついた。

「今年はちゃんと撮ってよね、去年全然ダメだったんだから」
早くも鬼嫁はプレッシャーをかけてきた。
「どこから撮るつもり?」
「ここからズームで撮れば大丈夫だろう」
「本当ぉ?去年もそんなこと言ってて失敗したんだから」
うっせーなー・・・。
妻は2日ほど前に珍しく熱を出して寝込んだ。病み上がりのせいかいちいち言葉がトゲトゲしい。

開会式が始まった。園児入場。
おれは「ちゅーりっぷ組」にカメラを向けた。
「ちょっと、どこ撮ってんのよ(イラ)」
「え、なんで?」
「ゆうちゃん(子供の名前)は“ぼたん”でしょっ!(イライラ)」
あ、そうか、ちゅーりっぷは年少の時で、年中に上がって変わったんだった。
しかしぼたん組にカメラを向けると、なんと我が子はその前にいる子供がきれいに被っていて、今の位置からではほとんど見えない状態だった。
「あ、こりゃダメだよね、これじゃどうやったって映んないよね」
とおれはすぐさま不可抗力をアピールした。
「んー○○ちゃん(ママ友)とこにちょっと入れてもらったら?」
なんと5時半から場所取りしていた人のところに入れてもらえとこの女は言うのだ。
鬼嫁にとってはママ友かも知れないがおれにとってはまったくの知らない人、いや、たとえ知り合いだとしても5時半から並んだ人の所へ後からノコノコ来て「入れて」なんて言えるはずがない。
まあ開会式なんてどのみちつまらないものだからおれがそのまま動かなくても鬼嫁はそれ以上は責めてはこなかった。

しかし20mかけっこが始まると、妻も容赦はしなかった。
「一番前行って!みんなやってんじゃない!」
「みんなシートを敷いてんのにその上を歩けるかよ」
「靴脱げば大丈夫よ、ほら、あそこ行って!」
鬼嫁のイライラのボルテージはさらに高まった。
おれは意を決し、他人のシートの上を横切り、なんとか最前線にたどり着いた。

しかしそこで新たな問題が発生した。
おれの構えた距離からでも、子供たちが同じ黄色の帽子をかぶってしまうとどれが自分の息子かよく分からないのだ。しかも1レースを6人くらいで走るため、みんな横に列を作って並んでいるのでよけい奥の列が見えない。
だんだん息子の「ぼたん組」の番が近づいてきた。しかし未だに息子が発見できない。
「とりあえず6人を全部カメラに入れてしまうか・・・」
そうすれば写ってなかったということはなくなる。
しかしデメリットとしては広範囲をフレームに入れるため被写体が小さくなってしまう。
たとえ写っていても、それこそどれが息子か分からないかもしれない。

いよいよぼたん組の番だ。
ああ、息子よお前はどこいいるのだ。
おれは6人全部をフレームに入れた。もうこれしかない。撮り終わっても結局息子がどこのレーンを走っていたのか分からなかった。

妻のところへ戻ると
「3位だったね、ちゃんと摂れてるよね」
「うん・・・、全員入れたんで写っているはず・・・みんなおんなじ帽子かぶられちゃうとどれが自分の子か分かんなくなっちゃうんだよね。だから全部入れておいた」
とおれは自分の行動の正しさをアピールしたが、
「3列目だって言ったじゃない、もう!(イライライラ)」
そんなこと言ってたか?

このあと息子の出る演目はまだあと3つある。

つづき⇒理不尽運動会~中編

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