圏央道とブータン王国

エッセイ

「圏央道」というものを初めて通ってみた。
実家が八王子にあるので、外環で練馬に出てそのまま関越自動車道に乗り鶴ヶ島から圏央道で高尾山へというルートだ。
そもそも圏央道というものがよく分からず、おそらく東北自動車道と関越自動車道と中央道と東名を繋げるのだろうぐらいの認識で、それがいつできるのか、どんなものができるのかなど何も知らなかった。
その日は3連休で高速道路はどこも渋滞、しかし荷物が多いのでどうしても車で帰らなければならなかった。

妻が近所のママ友に聞いた話で、その家も実家が八王子で、度々圏央道を使っているという。
自分のカーナビが古く、圏央道が載ってないのでどれだけの時間がかかるのかわからないが、スマホの交通情報アプリによると圏央道経由が唯一渋滞の回避できるルートだった。

実際に行ってみると青梅、あきる野市を抜けて八王子に向かうそのルートは実に快適だった。

もうすぐ高尾山か・・・トンネル・・・

ん?なんだこれは・・・。

そのトンネルはまさに霊山でもある高尾山の山腹をぶち抜いていた。近代日本の中で平和ボケのおれにさえその光景は異常さを感じてしまった。
山をくり抜くといえば、中央道なんかことごとく立ちはだかる山々にトンネルをブチ抜いているが、圏央道のそれは
「ああ、ここまでやってしまったか・・・」
という無残さを感じた。

この環境破壊、というより生態系破壊は凄まじい迫力があった。この道路は確かに便利ではあるが、何もここまでしなくてもという残酷さ。
恥ずかしながら精神が弛緩しきっていたおれは何も知らなかったが、圏央道建設にあたっては反対派による訴訟も起きていた。
ネットで調べると、最初に出てきたのが「赤旗」の2010年の記事。

「1300種の植物が生息する高尾山(東京都八王子市)を直径10メートルのトンネル2本で貫く圏央道(首都圏中央連絡自動車道)建設をめぐり、市民らが国土交通省の事業認定と都収用委員会の収用裁決の取り消しを求めた「高尾山天狗(てんぐ)裁判」行政訴訟の判決が1日、東京地裁でありました。八木一洋裁判長は「圏央道は公共性がある」として環境被害の影響を軽視する判断を示し、原告の請求を棄却しました」

結局裁判では原告が負けてしまったので高尾山に穴があいたわけだが、こんなことしてこのまま済むとも思えない。霊山はきっと怒っているんじゃないだろうか。

たまたま数日前、NHKの深夜番組でブータン王国の特集をやっていた。
ブータンのある村に、電気を引くために電線を設置する計画が持ち上がったが、その村はツルの越冬地で、電線を設置すると、ツルの越冬の邪魔になる…というので、政府は設置をやめ、村人もその提案を受け入れた、というものだ。
幸福度世界一の国、人間のレベルが違う。
世界一幸せな国を一度自分の目で見に行きたい。

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