「ねえ、電話番号教えてよ」・・・2

スピリチュアル

おれが入った教習所はとにかく簡単に卒業させてくれると評判の教習所だった。
そしてそれは噂通り、おれは「こんな状態で大丈夫なのだろうか」と我ながら不安なまま追加教習もなく卒業してしまった。

さて5月になり、おれは誘われるままにその女性が卒業した大学の5月祭にのこのこと出かけて行った。
そこは八王子市とあきる野市の狭間にある、ある意味有名大学だった。母体は政党と全国に800万人以上の会員を有する仏教系の宗教団体だ。

最初案内された体育館では、ある政党からの来賓が「モノレールを必ず作ります!!」と絶叫し、学生たちはその演説に熱狂していた。(現在、本当にJR立川駅からモノレールが出ている)
そのあと何をしたかは覚えてないが、たぶんあちこち案内されたのだろう。
帰る前にその女は
「このあとちょっと時間ある?」
と聞いてきた。
「会わせたい人がいる」
というのだ。おれはもうなんとなくわかっていた。
「もしそこで勧誘とかいう話なら行かない」
「いや、そんなんじゃないから」

どこまでもお人好しのおれはそのまま車で自治会館のような所に連れて行かれた。
そこで待っていたのは、あれほど念を押しておいたのにその宗教団体への怒涛の勧誘だった。
まず中年の女性が出てきて、いかにこの宗教が素晴らしいのかをとうとうと説いた。
そいつはその宗教が海外でいかに認められ、信者が多いかを力説した。

「この間もフランス人の留学生がね、一緒に〇〇〇を唱えていたら、もっとやろうっていうの。それでさらに続けていたらもう涙を流しながら唱えているのね」

だから何だというのだ。
まったく理解しないおれに業を煮やしてさらに中年の幹部らしい男性が出てきた。
そいつのプレゼンもかなりお粗末なものだった。

「世の中にはいろいろな宗教があります。それらがダメだとか間違っているというわけではありません。ただ、世の中には幼稚園から小学校、中学校、高校、大学と、学問にもそれぞれレベルがあるように宗教にもレベルがあるのです。私たちのがまさに最高学府のレベルにあるのです!」

当然ながら何の根拠を持って自分たちが一番なのかについての客観的な説明は一切ない。
これが全国に800万人以上の会員を有する一大宗教団体の勧誘方法とは思えない。
このままいくとまだ誰か出てきそうだったので、
「勧誘はしないというから来たのに話が違う。あなたがたの言ってることもとても理解できないので帰る」
と言うと、「えっ」とその男はおれの出方にあっけにとられ、
「実は申込書も用意してあったのですが・・・」
とばつが悪そうに言ってお開きとなった。
そのあと例の女は「ごめんね…」と謝ってきたが、別に怒る気もなかった。

これをきっかけにというわけではないが、今までの人生の中で実にたくさんの宗教に勧誘され続け、中にはマインドコントロール手前あたりの結構ヤバいのもあった。
一番ヤバかったのは多分おれが27歳くらいの時に上野駅で言葉巧みにおれに近付いてきたやつだった。
そいつはおれに
「上野駅は色に例えると何色だと思いますか?」
と妙な質問をして、見事におれの足を止めたのだった。
営業マンだったらなかなか優秀かもしれない。って今だからそんな悠長なこと言っていられるが、当時のおれにとってはこれはかなり危険な事態の幕開けで、よく深みにはまらずに逃げ切ったものだと自分の守護霊に感謝している。

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