アコギの独習

アコギの部屋

私がギターを始めたのは高校1年生の秋だった。ちょうどフォーク全盛時代が終わり、また歌謡曲がはやりだし、そしてニューミュージック(今でいうJ-POP)が台頭してくる直前のタイミングだろう。そうだ、ピンクレディーがデビューしてキャンディーズが解散した年だ。その年の夏はさだまさしの「雨やどり」がオリコンチャートの上位に食い込み、冬には突然中島みゆきが注目され始めていた。先に言っておくとその翌年にサザンオールスターズがデビューし、松山千春の「季節の中で」が大ヒットし一躍スターダムにのし上がった。TBSの「ザ・ベストテン」でもそれまでの歌謡曲たちを「ニューミュージック」と言われた、つまりはシンガーソングライター達が上位を独占していた時代だ。当時の私の音楽志向は「小椋佳」だった。心に響く歌詞と心地よい旋律と独特の柔らかい声でレコードは既にベストセラーだったがその実態がまるで分らなかった小椋佳が突然NHKホールでコンサートをやった。当然それはものすごく話題になり、当然NHKは中継し、翌日の学校での話題は「昨日見た?小椋佳」となった。それまで山口百恵だの郷ひろみだのと歌謡曲しか聞いてなかった私は小椋佳が歌う「揺れるまなざし」を聞いて瞬時に魅了されてしまった。そして本人が歌う「シクラメンのかほり」は布施明がレコード大賞を取ったそれとはまったく次元の違うものだった。布施明は髪を振り乱して絶叫しながら歌っていたが、作った本人が歌う「シクラメンのかほり」は静かにさりげなく切ない歌だった。そんな高校1年生の秋、校舎のエントランスホールのようなところの椅子で2人ぐらいだったと思うがギターを弾いていた。そのうちの一人は隣のクラスの古川くんだった。「へー、ギター弾けるんだ」すると古川くんは布施明の「シクラメンのかほり」を弾き始めた。これが衝撃だった。彼はレコードと同じようにイントロを弾いて見せた。「レコードと同じだ!」そんなことはプロのギタリストにしかできないことだと思っていた。「どこで習ってんの?」「別に習ってるわけじゃないよ」「じゃあなんで弾けるの」「誰でも弾けるよ」私の常識では、ギターもピアノと同じようにそういう教室に通ってはじめて弾けるようになるものだと単純に考えていた。独学でできるようなものではないと考えていたのだ。「コードっていうのがあってさ、それさえ覚えちゃえば誰でも弾けるんだよ」
その日の帰り道、私は書店に立ち寄った。独学でギターが弾けるようになるなんてまだちょっと信じられなかった。そしてそこで見つけた本はさらに衝撃的なタイトルだった。『初めてのギター 1週間で弾ける小椋佳』もちろん即買いしたのは言うまでもない。
しかし・・・・・・私はギターを持っていなかったのだ。

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