京都から奈良へは1時間もかからなかった。
さあ、まずは東大寺から行くか。
駅を降りるとまず、京都とはずいぶん様子が違った。
いたるところに中高生がひしめいている。
あ、修学旅行か!
コロナが終わったわけでもないのにいよいよ修学旅行は解禁なのか。
自由行動になっているのか、みんな市内循環バスを利用している。
駅から東大寺まで歩くのがイヤだったので「東大寺・春日大社行き」の市内循環バスに乗ると、生徒たちもどどどっと乗り込んできてバスはたちまち満員になった。
そして思った通り「東大寺・春日大社前」でどどどっと降りて行った。
生徒のほとんどが東大寺の方へ向かったのでおれは反対側の春日大社へ向かった。
東大寺はどうせ混んでるだろうから明日の早朝に行こう。
春日大社にも当然修学旅行生はいたが、とにかく広いからか、奥へ行けば行くほど生徒はもちろん人も少なくなっていった。
鹿があちこちにいる。しかしおれは知っているのだが、奴らは「鹿せんべい」を持ってないと決して寄って来ないし、「鹿せんべい」を食べたらさっさと離れていく。愛想を振りまくことも無いし場合によっては嚙みついてきたりもするのだ。
時間が午後だからなのか、鞍馬寺のような厳かさというよりは自然の中で森林浴、という雰囲気だった。おそらく普通の人が入れるのは整備されてる範囲までで、それを超えたところに原生林とかがあるのだろう。別に森林浴を求めていたわけではないのでやがて飽きてしまった。一応はここもパワースポットなのだろうか。しかし当然ながらそういうものに鈍感なおれのセンサーは何も反応しない。
しばらく歩いていると「新薬師寺まで800m」という標識が出てきた。
そうだ、もうここはいいから新薬師寺に行こう。
新薬師寺は12の守護神が薬師如来を囲っていてそれがなかなかカッコいいのだ。
おれは標識に従って歩いて行った。だいぶ気温も高くなってきて、汗ばむくらいになっていた。
少し迷ったがようやくたどり着いた。
「あれ?」
自分の記憶とは裏腹に、新薬師寺はやけに小さかった。こんなに小さかっただろうか。
絶対に修学旅行で来ているはずだった。しかし修学旅行で来るということは、何台もの大型バスと200人近い生徒がいるわけだが、どう見てもそんなキャパがあるとは思えなかった。
ここじゃなかったのだろうか。しかし門のはじの方には十二神将のポスターが貼ってあったから間違いは無いと思う。
それよりもなにも・・・
驚いたことになんと門が閉まっているじゃないか!
しかしその門には「参拝できます。マスクを着用して~」などと書かれてある。
「参拝できます」って言っておきながら門が閉まっているってどういうことだ。
入場券の販売所らしきところも閉まっている。もちろん人気(ひとけ)は全くない。
誰もいないので誰かに聞くとかして確認することもできず、しかたなくおれは来た道を引き返すしかなかった。
後日ホームページを見ると
「写真の門は東門ですが、こちらはいつも閉まっていて、玄関口になっているのは南門(重文)です。玄関口である南門をくぐって、正面にあるのが国宝の本堂です」
などと書いてある。なんだやっぱり入れたのか!
それにしてもなんという分かりにくさだ。だったら案内に
「参拝できます。南門へお回りください」
とか書くべきだろ。せっかくの機会をどうしてくれるんだ。
しかし境内にも人は誰もいなかったし、ホントに休業だったのだろうか。
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