ジャパンヴィンテージ、幻のギター「Cat’s Eye CE-2500」

アコギの部屋

今週、ずっと悩んでいる。
最近またギターに凝り始めたのだ。
多分その原因は、5月に学生時代の軽音楽サークルの仲間となんと26年ぶりくらいに会ったのが始まりだ。彼らは今でもギターを弾いているという。
そしてさらにおれの凝り性に火をつけたのが、会社の同僚の女子で、「ギターを習いに行くの」と、たぶんウソだと思うが毎週月曜日にCCB(ロマンチックが止まらない、の人たちね)のギタリストから習っているという。

今、我が家には4本のギターがある。
ひとつはおれが学生時代に、分不相応にも特注で作ったKヤイリというメーカーのギター。
そして96年頃、復活甲斐バンドのライブを見て衝動買いしたエレキギター。

長年弾かなかったのでトップの板が波打ってしまいスクラップ同然の12弦ギター。
そしておれが高校一年生のとき、初めて手にしたガットギター。これはもう糸巻きも動かないほどの骨董品だ。

しかし妻はおれのささやかな趣味を理解するどころか、「家が狭くなるから早く処分しろ」と常々言って来た。
最近おれがまた会社から帰ってから弾き出すと「うるさい!」とか言いやがる。
ある日、その同僚の女子が「あたし、ギブソン買うんだ」とか言い出した。
チューニングもできないくせに何がギブソンだ、ケッ!と軽く毒づきながらもネットで中古ギターを検索していくと、おれは見つけてしまった。

おれが高校生の頃、東海楽器というメーカーから「Cat’s Eye」というブランドで発売されていたギターの当時の最高峰「CE2500」という機種だ。当時で25万円もした。
高校生にとって25万円といったら社会人にとっては家を買うのと同じくらい途方もない金額だ。
ちなみにこのギターはとっくに生産終了していて、今では手に入らない。それどころか、使用していた木材が「ハカランダ」という、今ではワシントン条約で輸入できない木材を使っているので今となってはレプリカさえ簡単には作れないのだ。
そしてこれが売りに出されている。
価格はなんと38万円。
うーーーーん、欲しい。

値段はもちろんかなり抵抗あるが、とにかく超レアものなのは確かだ。
アコースティックギターをかじった人間にとって、やっぱり共通の憧れは高級ギターの代名詞「マーチン」だろう。「いつかはクラウン」ならぬ「いつかはマーチン」なのだ。でも38万も出したらマーチン買えてしまう。
でもおれはこのCat’s Eyeが欲しい。なぜならマーチンは今でも新品が普通に売られているが、これはもう誰かが手放さない限り絶対手に入らないシロモノなのだ。


おれの購買意欲に俄然火がついた。
しかしそこには金額以上にもっと大きな問題があった。
うちの鬼嫁だ。
そもそもうちの鬼嫁が、ギターがもう一本増えるなんて許すはずがない。
今ある4本のうち、3本を処分したって絶対もう一本の追加は許さないだろう。
つまり例え買ったとしてもどうやって家に持ち込むのか・・・。
おれはこの一週間、その問題についてずっと考えていた。 

①知らん顔してこっそり置いておく。そして気づかないのをひたすら祈る。 

②友人のをしばらく預かることになった、ことにする。

③今まで言ってなかったが、実は実家にもう一本持っていたんだ、と言い張る。

④「男のロマンに女がいちいち口出しするな!」と逆ギレしてみる。 

⑤古道具屋で5000円で売っていて、弾いて見たらとてもいい音がしたので衝動買いしてしまった、でも5000円だよ、と既成事実を作ってしまい、ひたすら謝る。

その後も相変わらず悩み続け、「まだ売れてないかな」とハラハラしながら毎日Webをチェックしていた。しかし悩んでいるだけでは事は進まない。
大阪の店だったのでおれはその店にメールを入れてみた。
内容は、
「たまたまホームページで見つけたが、とても興味のあるギターが掲載されていた。しかしギターは実際に弾いてみて買うかどうか決めるものだと思うが、大阪では試奏にもいけない。どうしたらいいか」

というようなものだ。
通販だから当然「気に入らなければ7日以内返品OK」というような返事が来るのだろうと期待していた。もしそうなら、とりあえず送ってもらって、すっごく気に入ったら次のステップを考えよう。

1時間後くらいに返事が来た。しかしその内容におれは驚いた。

「近くの楽器店で、近いスペックのものを弾いたり知人から情報を集めるなりしてください。心配であれば地元の楽器店で買ったほうがいいですよ」

というような内容だった。なんだこれは。「他の店で買ってくれて結構」って、大阪商人のいうセリフか!

おれの購入意欲は急速に消沈し始めた。
38万円の夢のギターが現実からどんどん遠ざかっていった。


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