本当に新型コロナに感染した①

新型コロナ

2020年に始まったコロナ騒動だが、私はしぶとく罹患しないまま2年が経った。
正直言うと、この間(かん)何度となくコロナが疑われるような体調変化が全くなかったわけではない。
しかし常に「気のせい」で乗り切ってきた。
一時は夜、熱が急に38度まで上がり「もはやこれまでか」と思った時も翌朝には熱も引き、PCR検査も陰性で何とかセーフ、という時もあった。
その後も「なんか熱っぽい」「なんか喉が変だな」ということは何度となくあるにはあったが、すべて「気のせい」で押し通してきた。

そんなある日曜日の夕方、再び「なんか熱っぽい・・・」という状態になった。
よし、今度も「気のせい」で乗り切ろう・・・。
しかしこの日はちょっと様子が違った。
それは自分の中でいつもと違う、ということがうすうす感じてもいた。
熱は37.4度をずっとキープしている。
体感として一番不快なレンジだ。
関節もあちこち痛い。

なんとか今回も「気のせい」にしたい・・・
そうだバファリンを飲んでみよう。
強制的に熱を抑え込んでしまおうという作戦だ。
おれはバファリンを1錠飲み、風呂に入ってそのまま無理やり寝てしまおうとした。
時計はまだ夜の7時台だった。

そして朝。
起きた時点ですぐに「会社は無理」と思った。
あちこちの関節が痛い。発熱した時の特有のイヤな感じが全身にあった。
バファリンで抑え込んだせいか熱こそなかったが、代わりに変な気持ち悪さがあった。
熱を無理やり抑え込んでしまった副作用のような感じだ。

時期的にやらなければならないことは結構溜まっていたので、とにかくPCが無いといろいろ困る。
ホントは全く動きたくなかったが、6時前に家を出て7時に会社に行き、そのままノートPCを持って帰宅した。

「これはやっぱりさすがに検査しないとダメだろう」
家に帰り、近所のクリニックに電話した。

「あ、あの、昨日から37度ちょっとの熱が出てるんですがそちらで検査ってできますか?」
「できますよー。では11時にクリニックの後ろにテントがありますのでそこに直接来てください。クリニックの中に直接入って来ちゃダメですよ」

まあそうなるだろうな。

おれは指定された時間に出かけて行った。
おれの前におばちゃんが順番待ちしていた。
テントの中には誰もいなかったが、検査待ちはおれを含め3人だった。
11時を少し回ったところで看護師が出てきた。
まずはおばちゃんからだが、その人は
「昨日から熱が出て喉が痛くて大変なのよぅ」
と訴えていた。それってもうコロナ確定じゃん。このおばちゃんからはなるべく離れていよう。

ちょっと冷静に目下の己の状況を確認してみた。
熱っぽさ以外では、喉には多少の違和感があるが咳が出るとか痛いとかではない。
味覚も嗅覚も正常。呼吸も正常。
うん、今回も乗り切れそうな気がしてきた。

そしておれの検査の番が回ってきた。
鼻の中に綿棒を突っ込まれぐりぐりやられた。
「結果が出るまで少しお待ちくださいー」
以前保健所でドライブスルーのコロナの検査をした時は結果が出るまでに2日くらいかかったが、今はその場で出るのか。

「検査結果出ましたー」
今度は院長が出てきた。
「えーと、陽性ですね」
「え?ぼくですか?(前のおばちゃんじゃなくて?)」
「薬はどうしましょうかね、喉は痛いですか?」
「いえ、多少の違和感はありますが痛いというほどでは・・・。ホントに陽性なんですか?」
「えーそうですね、陽性」
院長はカルテを見ながらきっぱりと言った。そして陽性者用のチラシをおれに渡し、
「WEBでこれ、登録してくださいね」


重症患者は医療機関から直接県だか保健所だかに連絡するが、自宅療養できる人は自分でWEBから「陽性になりました」と申告しなければならないらしい。そして申告すると「今日の感染者数は~」というニュースの人数にカウントされるのだろう。

これから8日間、おれは家庭内隔離を行わなければならない。
鬼嫁は絶対おれを責めるだろうな。
あ、子供も学校行けないんだろうか。期末テストって終わってるんだろうか。
今週会社行けないとなるといろいろ面倒なことになるな・・・
一気に懸念事項が頭をよぎっていった。

家に戻り、言われた通りWEBで登録してみた。
するといろいろなコロナ療養者情報が載っていた。
その中に「ホテル療養」というのがあった。
そうだ、ホテルに行ってしまえば鬼嫁にうるさく責められることもない。
いいアイデアだと思ったが、ホテル療養は、まず部屋から出られない、デリバリーもダメ、洗濯もできないというようなことが書かれていた。完全に軟禁状態になるわけで、さすがにこれは耐えられそうもない。
そういえば会社でコロナにかかった人で、自治体から食材が段ボール2ケースも届いたと言っていた。これは登録したら自動的に送られてくるのだろうか。
しかしよくよく読んでいくとそれは単身者が優先で、そもそも埼玉県では「配食サービスは終了しました」と出ていた。なんだよそれ。

とりあえず、おとなしく寝ていよう。
そもそもすでに体がだるく、何もする気が起きなかった。
コロナ療養生活の1日目の始まりである。

つづく


コメント

タイトルとURLをコピーしました