野球少年はテニス部に入った

育児の部屋

中学に上がった息子はテニス部に入った。野球は6年間もやってきたのでもういいそうだ。
テニスと言っても中学校なので軟式になる。話を聞く限りでは、特に上級生の陰湿ないじめや無意味なシゴキもないようだし、私もテニスをやってるので共通の話になっていいだろうと思った。しかし部員によってモチベーションに大きな格差があり、やる気の全然ない部員も少なくないらしく、まじめに練習をする子は限られているようだった。少年野球では全員一生懸命やるのが当たり前だったので、息子には“まじめに練習しない”という心境が理解できず、練習中もふざけてばかりいる部員たちがかなりストレスになっていたようだった。そもそもコートが1面しかなく、普段は上級生が独占しており、顧問もテニス未経験者で教えてくれるわけでもないそうで、しきりに「テニスはつまらない」とぼやいていた。
4月に2年生になると同時にコロナ騒ぎで学校は休校が続き、ほとんど登校しないまま3年生は引退。コートは2年生である自分たちのものになった。しかし相変わらず指導者不在(というかいるけど教えられない)で、唯一の教科書はYoutubeの動画だった。それでもやはり少年野球をやっていたというのはかなり役に立っていて、試合では結構勝てることもあったようだ。ボールに対するカンが出来上がっていたのだろう。
軟式テニス部は大した大所帯ではなく、まじめに練習する子も決まっていたので息子は成行き上、部長になってしまった。すると一応使命感が出てきたのか、”試合は勝たなければいけない”と思い始めたらしい。何か月か前に自分から「試合前だから練習したい」というので私の通っているテニススクールでコートをレンタルし、相手をしてやった。毎日部活でやってるのでもしかしたらもう抜かされたかと心配していたがまだそこまで上手くはなかった。
そして先々週、新人戦があるというのでまた練習したいと言ってきた。考えてみればほぼ自己流でやってきており、一方で他校にはちゃんと指導者がいたりする。コートだって何面も完備している学校だってある。これは不公平だ。
そこで私は今、自分が習っているコーチに、息子に軟式の基礎を教えてもらえないかと打診したら快諾してくれた。
今私が習ってるコーチは「草トーナメント荒らし」であっちこっちの大会に出ては優勝をかっさらっていた。おそらく今年に入ってからは連戦連勝だろう。中学の時、やはり軟式をやっていたと昔聞いた記憶があった。理論派タイプで、「なぜ腕をこう振らなければならないのか」とか「ボールをとらえる位置はどこがベストなのか」など理詰めで説明する人だった。

練習当日は一緒にダブルスを組む子も参加させた。軟式だから必ずダブルスなのだ。レッスン料は1時間1人3,000円でインドアのコート代込み。激安だ。
土曜日の夜、コートに集まった息子とそのペアの子にコーチは言った。
「今日は試合が近いのでテクニック的なことはやりません。それよりもどういう心構えで試合に臨むと良い結果が出やすいか、ということを教えていきます」
え、基本を教えてほしかったんだけどな、今まで自己流で来ちゃってるし・・・。

しかしその1時間の練習はさすがにプロのコーチ。コーチ対子供ペアの試合形式での練習をメインにやっていたが、絶妙な配球で試合展開を学ばせ、最後にはわざと負けてあげる。子供たちにとっては初めての経験だったのはもちろん、
「試合の時に強いボールはいらない」
「試合では30%くらいの力しか出せないものだと思っていた方がいい」
など随所でのアドバイスは結構効いたようだった。最後に子供同士でラリーをさせていたが、「あれ、うちの子こんなに上手かったっけ」とちょっとあせった。
もうあと半年もしたら確実に抜かれるだろう。
そして先日行われた個人戦では3回戦まで行き、そこで負けたらしい。
「来週団体戦があるんだよ。おれ、新しいラケットがほしい」
「じゃあ3位に入ったら半分出してやる」
「えーそんなの無理だよ」
「優勝したら買ってやるよ」
「え、マジ?」
息子からはしばらく「つまらない」というセリフは聞こえてこない。

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