昨年の最後を締めくくるパワースポットは、茨城県にある光の柱で有名な御岩神社へ行った。
12月に入っていたので特に朝の境内は指先が痛いほど寒かったのを覚えている。
12月に神社なんか来るもんじゃないと最初は思ったが、御岩山を登り山頂にある「光の柱」を見た時は
やっぱり来て良かったと思った。
そして今年最後のパワースポットは再び三峯神社、もちろんその奥宮を目指すことにした。
「関東最強のパワースポット」と呼ばれる三峯神社は今年5月に初めて行ったが、愚かにも奥宮の存在を知らず、本殿だけ参拝してのこのこ帰ってきてしまったのだ。
三峯神社の奥宮は秩父の霊峰三山のひとつ、妙法ヶ岳の山頂にあり、三峯神社のバス停にもちゃんと標識もあったらしい。
確かに標識らしきものはあった。しかしそこにはおそらく「妙法ヶ岳方面」とか書かれていたのではないだろうか。「奥宮」と書いてあれば当然そこにも足を運んだはずだ。
まあいつかまた行けばいいやぐらいに考えていた。
他いも行きたいところはたくさんあったので、再訪するとしてもその優先度は下の方だった。
が、なぜか最近になって「三峯神社」が妙に気になるようになっていた。
なぜだろう・・・
「これは呼ばれているのかも知れない・・・」
と都合のいいように考え、ひそかにうぬぼれていた。
今年、あと一回どこかの山の絶景を見に行きたいと考えていたが、9月に行った乗鞍岳でのツキノワグマ襲撃事件の話を聞いて少しひるんでいたのと、絶景の見れる山となるとある程度標高が高いところである必要がある。やはり標高2,000m以上はほしい。しかし11月、まして12月ともなると雪が降る可能性がある。
雪山ほど危険なものはない。じゃああとはどこがあるのか・・・。
そこでにわかにまた「三峯神社」が大きくクローズアップされてきたのだ。
本殿から奥宮のある妙法ケ岳の頂上までは約1時間半だという。この間行った乗鞍岳も剣ヶ峰の頂上まで1時間半と謳っていたが、それはなかなかハードな1時間半(実際は2時間以上かかった)だった。
奥宮へ行くYoutube動画もいくつかチェックしたが、「それなりに大変ですよ」というのが共通したコメントだった。
もともと登山には全く興味がなく、山登りなんか疲れるだけなのでできれば一生登山とは関わらない人生を歩もうと考えていた。それが「標高の高い山では登山の苦しさの忍耐と引き換えにスゴイ絶景が見れる」と知り、がぜん興味がわいてきたのだ。そして登山の苦しかった記憶はわりと短期間で忘れてしまうものだということも分かってきた。先日行った行った乗鞍岳でも、下山した時点では「もう登山はこりごりだ。もう山なんか行くもんか」と思っていたのに、その辛かった思いも2週間後にはもうはるか1万光年のかなたに消えてしまっていた。
今回も前回同様に前のりで金曜の夜に秩父まで行き、安いビジネスホテルに1泊して朝一のバスで三峯神社に乗り込む作戦だ。
一つ懸念点があった。
この週末には、携帯キャリアの変更だの衆院選挙だのその他いくつか計画があり、かなり立て込んでいた。
さらに天候だ。
2週間くらい前から頻繁にチェックしていたが、秩父の雨の確率がずっと50%だった。
1週間を切ったところで、これは翌週に変更したほうがいいかも知れないと思い、楽天トラベルでホテルの予約欄を開くと、なんともうキャンセル料の発生するタイミングになっていた。
「これはもう、絶対この日に来いよというメッセージだろう」
「呼ばれた」といううぬぼれ気分よりも「退路を断たれた」という気分だった。
しかしさらに日が進むと、土曜日の降水確率はだんだん下がっていき、出発予定の前日には晴れマークまででていた。
三峯神社の奥宮は妙法ケ岳(標高1,329m)の山頂にある。本殿からの標高差は200mだが往復で4時間見ておいた方がいいらしい。
ところが何気に見ていたネットの情報では「開山期間は5/3から10/9までで、それ以外は入山できません」などと書かれていた。ということは奥宮へは行けないのか?
そうだ、こういうのは経験者に聞こう
Yahoo!知恵袋だ。
既に同じような質問をしてる人がいた。回答としては「行けるけど自己責任」という人と「ダメ」という人に分かれた。
「ダメ」という中には「神様が門を閉めてるのに無理やり行くのはそもそも失礼」とかいうのもあった。
でも今回は神様に来いと呼ばれてるからなぁ・・・。
そうだ、こういうのは直接現地に問い合わせるのが確実だ
そこで直接三峯神社に電話してみた。
「10月9日で閉山するってネットで見たんですけど、閉山以降は奥宮への参拝はできないんですか?」
「ああ、それよく聞かれるんですが、大丈夫ですよ。ただし11月下旬以降は雪が降ったりして危険な場合もありますのでやめたほうがいいかも知れませんね。やっぱり山なので冬場は凍結したりして危ないので」
さらにいろいろ情報を集めていくと、妙法が岳の奥宮への行程は決して楽な道のりではなさそうだった。
「登山装備は必須」と言ってる人もいる。
「スニーカーではなく登山靴かせめてトレッキングシューズで」という人もいる。
まあ多少大変だったとしても所詮は1時間半の行程だ。まあ何とかなるだろう。
こっちは富士山と乗鞍岳、3,000m級の山を二つも制覇しているのだ!
さて、予定通り前日に西武秩父駅の近くのビジネスホテルに移動し、翌日、前回同様に始発バス、35分前にバス停に行った。前回はおじいさんが一人待ってるだけだったのに、今回は既に10数名が並んでいた。少し焦ったがまあ座れるだろう。
そして前回同様にバスは1時間20分で三峯神社のバスターミナルに到着した。
ひとつ確認したいことがあった。
奥宮への標識はどんなふうになっていたのか。
なぜ前回は気づかなかったのか。
それがこれだ。
これは見逃すな。
ぱっと見だと、右方面は単に登山者用の案内に見えてしまう。
ちなみに雲取山は「鬼滅の刃」の舞台になったとこらしく、東京、神奈川、埼玉にまたがる標高2,017mの山で、アニメの影響もあって人気らしいが、登頂するのはなかなかハードで根性と忍耐と体力がいるらしい。
本殿で参拝を済ませ、おみくじを引き、いよいよ奥宮への参道に入っていった。
いきなり「熊、出没注意」の標識が出てきたが、それはもう織り込み済みで、すでにAmazonで熊鈴を買っておいたのだ。
奥宮への道程は、三つの鳥居が目安になる。
参道を入り、なだらかな道を15分ほど歩くと第一の鳥居が出てくる。奥宮と雲取山への分かれ道で、ここから本格的な登山道が始まる。
歩きやすかったのは最初だけで、「どれが道?」と思うような木の根だらけ道も多くなかなか順調には進めなかった。第2の鳥居が出てくると、あたりに白いもやがかかり始め、なかなか幻想的な光景となったが、登ってる身としてはそんな幻想感に浸っている余裕はない。
と、登山道から離れた上の方で何かが動く気配がした。
「まさか熊か!?」
それは熊ではなく、野生の鹿だった。
静かに何かをついばんでいたが、そのうち1頭がこちらをじっと見ていた。
同じ鹿でもそれは奈良公園にいた鹿とは全くの別ものに思えた。
約30分ほどで第2の鳥居に到着。以降、登山道はますます歩きにくくなっていった。
木の根が多すぎるのだ。木の根は滑る。そしてそれは登りよりもむしろ下る方が危ない。
妙法が岳の登山道は全体的に狭い。「ここを踏み外したら相当下まで落下するだろうな」と思わせる箇所も多い。そして歩きにくい。スニーカーではなく、せめてトレッキングシューズが推奨される。
結局登っていくことに必死で、今回も周りの景色とかはほとんど見ずに、下ばかり見ていた。足元を見ながらでないと危ないから仕方ないのだ。
第2の鳥居から約40分、ようやく第3の鳥居が見えてきた。
ここまでくればもう一息、のはずだったが、三峯神社の奥宮はそうは簡単にたどり着かせてはくれない。ここからは軍手が必須だ。四つん這いになって進まないと危険な場所もある。
「ここ、一体どうやって通ればいいのだろう」と思わせる道の連続だ。
前方を歩いていたおばちゃん2人組は「こんなの通れないよ~」と岩場にへばりついていた。
最後のパートは工事現場で見るような階段がある。これもかなり急勾配だ。
そして最後の極めつけは鎖場。上の方から鎖が垂れ下がっていて、これで岩場をよじ登っていく。
もうほとんどフィールドアスレチックのようだ。
その鎖場をクリアすると、「奥宮」と対面となる。
第三の鳥居からやはり40分くらいかかっていた。
妙法が岳の頂上は、奥宮だけの超狭いスペースだった。
乗鞍岳の剣ヶ峰の頂上もえらく狭かったが、ここは奥宮のスペースしかない。
よくこんなところに奥宮を作ったな、というか、奥宮を作るための資材をどうやってここまで運んだのだろうとそっちの方が不思議だった。
そもそも「奥宮」とは何か。
AIに聞くと
「神社では、本殿が一般の参拝者向けの拠点であるのに対し、奥宮は神の力が強く宿る場所として、特別な意味を持ちます」
「より深く神様とつながるための場所」
と言ってる。
また
「参拝には険しい道のりを伴うことも多く、精神的な修行や特別な祈願を行う場所とされます」
確かに険しい道のりだったが、私は果たして神とつながったのだろうか・・・。
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