さだまさしのギター

アコギの部屋

何度も言うが、ギターの最高峰はアメリカの「マーチン」であり、これに異論を唱える人はまあ少ないだろう。おそらく自分が高校生の頃のニューミュージック全盛、あるいはもっと遡っていわゆる「フォーク」と呼ばれていた頃のレコードの生ギターの音はそのほとんどがマーチンだったのではないだろうか。だから国産メーカーはこぞって「追いつけマーチン、追い越せマーチン」とばかりにマーチンギターを模倣して行った。
そんな中でおれが最も興味を持ったのがマーチンではなく、ヤマハのギターだった。これも何度も言うが、1980年前後のさだまさしが使っていたのがヤマハで、この音はマーチンのそれとは明らかに異質な音だった。だから初めてギターを買いに行ったときもまずはヤマハを試し弾きしてみた。しかし何本弾いても決してさだまさしの音にはならなかった。

「なんでだろう」

プロが使っているのは市販されているものとはやっぱり根本的に何かが違うのだろうか。 

それから25年、最近になってやったわかってきたのは、さだまさしが使っていたのはどうやら「L-53」という機種をベースにしたもので、当時は35万くらいで市販されていたようだ。どちらにしても高校生に35万のギターなど買えるはずもないが、今ではそのギター、すっかりプレミアムがついて中古市場では50~60万円で取引されている。 とあるヤマハギターファンのサイトに書き込みをしてみた。
「L-53はさだまさしの音が果たして出るのか」
親切な人が教えてくれた。 

「そういえば確かにそんな音が出ましたね」つづいて「でも確か長渕剛もL-53使ってましたね」 

なんだと、おれの嫌いな長渕も使っていたのか。 多くのメーカーが少しでもマーチンに似るように競っていた時代に、ヤマハのハンドメイドの技術者はいったい何を目指していたのだろう。

大学生の時、サークルの先輩が「マーチンHD-28」という機種を持っていて、一度だけ弾かせてもらったことがある。「おお、これが世の全ての男性の憧れ、マーチンかっ」
とかなりコーフンしたが、実際弾いてみるとそのコーフンはたちどころに消えてしまった。
なんか、「普通」なのである。おれが期待してたのは
「おお、やっぱりマーチンは国産とは全然違うわ、スゴイスゴイ!」
という感動だった。でも「普通」に感じたから感動がない。
おれにとっては「マーチン神話崩れたり」といったところだった。 
その一年後、いろいろいきさつがあってプロのシンガーソングライターで「きくち寛」という人をおれの大学に呼び、集会室のようなところでファンの集いみたいなことをやった。
この時、おれは本人が持参した同じく「マーチンHD-28」を恐る恐る弾かせてもらった。でもその時の感想も「普通」だった。だがきくち寛がライブで弾くそのマーチンは確かにド迫力の名器だった。「なぜだろう」
素直に認めたくはないが単におれの技術が未熟だったせいだろうか。まあそうだろう。実際ギターの音は弾く人によって大きく影響される。ど素人がマーチンD-45(マーチンの最上位機種)を弾いても絶対その本来の音は出せないだろう。
それから10年後、おれが会社の後輩をアパートまで車で送ってやったついでにそいつの部屋に上がりこみ、何か飲もうとしたときがあった。 そいつの部屋には無造作にギターが転がっていた。「え、お前ギター弾けんのか」とそのギターを手に取ると、何とヘッドの部分(糸巻きのあるところ)に「マーチン」のロゴが入っているではないかっっっっっ! 
「何でお前がマーチンなんか持ってるんだ、分不相応もはなはだしい!」と罵ってちょっとつま弾いたら驚いた。弦なんか一体どんくらい交換してないんだと思うほど伸びきっているのにその音量と音色の奥深さは衝撃だった。これで新品の弦に張り替えたらどこまでスゴイ音になってしまうんだろう・・・。
しかしそいつが言うには「確か13万くらいでしたよ」。 マーチン恐るべしと感じた瞬間だった。

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