【家族旅行】発熱39.6度の下田…後編

エッセイ

ホテルは和室だったが、なんと敷布団がテンピュール(類似品ではない)だった。
これは感動的な寝心地であった。
温泉に入り、テンピュールで熟睡・・・明日は本当に全快だ!
と思っていた矢先、またメールが来た。会社の奴からだった。

突然緊急ミーティングがあり、どうやらおれが悪者になっているという。
何だそれ?
とにかくプロジェクトのあら捜しみたいなことやって、問題点はみんなおれのせいになっているという。
ミーティングに参加していた連中もだんまりを決めてたという。
メールを送ってきた奴も結構話を大げさに言う奴だからそのまま信じる必要もないのだが極めて不愉快な話だ。

今年は震災の影響でイベントが5月以降毎月あり、おれはその全てに関わってきた。
かつて経験したことのないハードスケジュールで、しかも立場的にも「何かあればあんたの責任」という緊張感の連続だった。
そんなのが5月、6月、7月と連続して続き、なんとか無事こなしてきた。
今は8月末から始まるイベントへ向けて突き進んでいるところで、今回の旅行はそんな忙しさの中の間隙を縫って子供のために無理やりとった休みだ。
「よくやってくれている」というねぎらいや感謝なら分かるが、なぜ非難されなければならないのかまったく意味が分からない。

考え出すとどんどん怒りが沸きコーフンしてきた。
妻も子供ももう隣でひっくり返って幸せそうに寝ているが、おれの中の眠気は完全に吹き飛んだ。
こんな理不尽な話があっていいものだろうか。
ミーティングに参加した者たちは自分が責められるのがイヤだから、みんなおれのせいにした?
うーん、十分ありえる。

もうダメだなこんな会社。
辞める?
いや、そんなの無理。
このままでいいの?
家庭があるんだ。
でも会社は変わらないよ、人も・・・

おれの中で何人ものおれが激しくバトルを始めた。
時計は12時になっていた。
昨日もおとといもあまり寝てないのに全然眠くない。
せっかく温泉に入りテンピュールの布団の中にいるのに気分は最悪だ。
悶々としたまま夜中の2時になった。
明日は海に行くのに・・・
せっかくの休みなのに・・・
テンピュールなのに・・・
ちきしょーちきしょー・・・

そのまま気を失い、朝になっていた。

ほとんど寝た気はしなかったが、体調はずいぶん良くなっていた。
これなら海へは大丈夫だろう。
おれは昨日の夜のイヤな想像を無理やり頭の隅に追いやり、子供と過ごした。
海は台風が近づいてることもあり、波は高く水温も冷たく、何より風が強かった。

何も知らずにはしゃいでいる子供を見ながら考えた。
この(会社に対する)イライラはもう少し封印するか・・・。
少なくとも今は考えるのはやめよう。
これからの1ヵ月はすごく忙しくなるのだから。
暑くもなるのだから。

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