理想の上司…中編

社畜日記

「上司たるもの・・・」
特に出世欲があったわけでもなく、意図せずに成行き上、「上司」という形になってしまった当時、
この「上司たるものは」ということにいつも悩まされていた。
単なる一兵隊であれば自分の目の前のことだけ考えていれば良かったが、一つのチームの「上司」となるとプロジェクトの成功と同時にそこに「人の管理」というものがミッションとして付随してくる。
逆の言い方をすれば「人の管理」ができなければ プロジェクトもうまくいかない。
人は感情の生き物だ。4、5人集まればメンバー間でも必ず好き嫌い、合う合わないが出てくるし、
1年越しのプロジェクトであれば中だるみも含め、モチベーションが著しく落ちる時もある。
「上司」はこれらバラバラの個性を持った部下たちをひとつにまとめ、エネルギーのベクトルを同じ方向に向かわせなければならない。これは極めて困難な任務だった。

展示会の仕事はまさに1年がかりのプロジェクトで、おれが人の管理に四苦八苦している姿を見て
「まるで映画の“ロード・オブ・サ・リング”みたいですね」
と言った奴がいたが、まさにそんな感じだった。

考えてみれば、自分には「尊敬できる上司」というものに出会ったことが無かった。
どういう人が「いい上司」なのか。
世の中的には「島耕作」とかいうかもしれないが読んでないから知らない。
「みんな思いっきりやってこい!責任はおれがとる!」
みたいなイメージしかない。要は
「責任はおれがとる!」
というところが上司の決めゼリフなんだろう。
しかしそんなセリフがはける上司なんて世の中にどれくらいいるんだろう。
そう言えば最初に入った両国の会社の社長は
「何かトラブルがあった時、お客さんに謝るのが私(社長)の仕事だと思っています」
と言っていた。やっぱりこの人は人格者だったと思う。

「理想の上司」の参考となる見本が無いので自分がそうなるしかないと思った。
会社がモンスター社長で、人をけなしてモチベーションを破壊することしかしない人だったので、この人の逆を行こう。
当時ちょうど中途採用で3名が新たに入社し、おれは早速「褒めて伸ばす」作戦を実行していった。
とにかくほめて認めてやり、同じ目線で話を聞いてやり、自尊心を最大限くすぐって承認欲求を満たしてやり、どんどん木に登らせる作戦だった。これで個々のパフォーマンスは最大限に発揮できると思っていた。
しかしこれは大失敗に終わった。
おれのこの作戦のおかげで、1年後にはこの3人とも仕事のできないただの大きな勘違い野郎に成り下がってしまった。
するとやっぱりモンスター社長の独裁主義は正しかったのだろうか。
いや、これだけ多くの退職者を出しているのだ、いいわけがない。
その3人ともほどなく辞めていき、おれの下には新たに数名が入ってきた。人間的に素直な者たちばかりだったのでチームはなんとか安定したが、そのわずか数年後に今度は自分が関連会社に異動することになり、そこの組織は「上司」の在り方が自分の考えていたものとは根本的に異なる職場だった・・・。

つづく



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