きくち寛ファンの集い?

きくち寛

「イチローに会える」と言われたら誰でもうれしいだろう。
野球少年がイチローに会うことができ、直接指導してもらえたらそれは夢のような話だろう。
それと同じことがこの時まさにおれに起きていたのだ。

ラジオで聴いて、録音テープを何度も聞き、コンサートホールのステージを見て、その雲の上の存在のアーティストが自分の学校に来てくれるのだ。
おれはさっそく学生課で集会室の予約を取った。

おれの通っていた大学は新宿から小田急線で急行を乗り継いでもだいたい40分弱はかかる。
さらに駅から学校までは緩い上り坂で、ゆうに20分はかかる。いやもっとかかるかもしれないがバスもない。

当時、おれは大学の近くのアパートに住んでいた。
当日まず午前中にファンクラブの会長たちを駅に迎えに行った。そしてみんなで集会室で準備をし、午後、いよいよ本人を迎えにまた駅まで歩いて行った。
少し早めに行ったつもりだが、それでも本人はさらに早く到着していた。
改札を出たあたりでマーチン(ギター)のブルーケースを縦てそれをベンチ代わりに座っていた。


おれは完全に舞い上がったまま挨拶をし、
「今タクシー呼びますから」
と言うと
「いや、歩いていきましょうよ」
と言うではないか。どんだけ遠いのか分かってない。
「結構歩きますよ。20分以上かかりますよ」
「大丈夫ですよ」
というわけでそのまま緩い上り坂を一緒に歩いて行った。

これもどういう経緯だったか覚えてないが、集会室はせいぜい20名とか詰め込んでも30名も入らない大きさなので、大々的な告知はしなかったのだと思う。当日集まったのは確か14,5名ほどだったか。
集会場に入るときくち寛はおもむろにギターケースを開け、ギターの弦を張り替え始めた。

「そうか、弦もマーチン製のを張ってるのか。おれも今度からマーチンの弦にしよっ」

そして張り替え終わると、なんとそのギターをおれに渡してきた。
これがあのまさに日仏会館で咆哮していたマーチン(ギター)だ!それを今、自分が持っている!
ちょっと弾かせてもらったが、完全に舞い上がっているおれにこの状況で冷静さがあるわけもなく、もう音がどうかなんて分かるはずもなかった。

そしておれは図々しくも
「あの曲のイントロの部分はどういう(弦の)押さえ方をしていたんですか」
「この曲の間奏のコード進行が分からない」
など質問を連発していた。数少ないライブテープを日夜聞き、耳コピしていたがどうしてもわからない箇所がいくつもあった。
「人差し指でFを押さえて薬指でB♭を・・・で、次は」
そう来たか・・・
「何弦の何フレット」と言ってもらわないと音楽理論の知識ゼロで楽譜も読めないおれには何を言っているのか分からない。

その後、参加者を囲んでの和気あいあい(?)のミニコンサートみたいのをやったが、相変わらず一人で舞い上がってるおれはしつこくいろいろな質問をしていたのでファンたちの間でもおそらく浮いていただろうし、きくち寛本人にも少しウザがられてしまったのだと思う。
ある意味必死だったので全く空気が読めていなかった。
しかし強烈な願望を持ったおれの潜在意識はこの後もどんどん「引き寄せの法則」を発動していくのだった。
つづく⇒きくち寛 幻のライブビデオと音源テープ

きくち寛ファンクラブ


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