雨が降っても潮干狩り

育児の部屋

「潮干狩りに行きたい」
小学生になったばかりの息子が突然そんなことを言い出した
息子が「潮干狩り」がどういうものか知っているはずもないが、
どうやら向かいの子供が行って来たのを聞いて、自分も連れてけ、と言っているらしい。
潮干狩りか。おれが最後に潮干狩りに行ったのは中学一年生の遠足の時以来だ。いや待てよ、後にも先にもそれ一回だけじゃないか。自分は人生で1度しか潮干狩りに行ってない。それも意外だった。

子供に潮干狩りを体験させるのも悪くはない。
「じゃあ、次の休みに行くか」
ところが向こう一週間、潮が引かないので潮干狩り場はどこも休みということだった。
息子はじれったいままずっと待ち続けた。潮が引かないのは自然現象だからしょうがない。

そして待ちに待った土曜日、が来る前日、
「明日は全国的に強い雨が降ります」
と天気予報は伝えていた。
「どうする?もう1週間待つか?」
と妻に聞くと、
「無理。すっごい楽しみにしていて、明日早起きするってもう寝ちゃったもん。中止なんて言えないよ」
天気予報では、昼近くから降り出すと言っていた。
どのみち潮干狩り場の開場時間は10時から1時までらしいから、
雨が降りだしたら帰ればいいか、と考えた。

翌朝、昨日までの天気と違って空はどんよりと曇っていた。
千葉県の天気予報は「早いところで11時くらいから降り始めるでしょう」
と言っている。
どんなに早く行っても10時まではオープンしないから、早く行って早く帰るというわけにはいかないのだ。

昼まで天気が持つことを祈りながら、我々は千葉の船橋にある潮干狩り場に向かった。

高速は順調に進んだが、浦安を越えたあたりでフロントガラスに「ポツン・・・ポツン・・・」と水滴が落ちだした。
時間はまだ7時だ。おかしいじゃないか、昼までまだ何時間あると思っているんだ。
しかし雨はどんどん強くなっていく。
おれはこの時点でもう心が折れ、今日は中止で早く引き返して帰って寝ようなどと考えていた。
ところが妻は「ここまで来たんだから行くだけ行く」と言う。

結局現地まで行ってみた。
雨はなんとなく小降りにはなっていたが、午後には全国的に強い雨になると言っているのだ、やむことはあるまい。
駐車場には既に何台か車が止まっていて、みんな車の中で待機しているようだった。
まだ2時間以上ある。妻は近くのコンビニでおにぎりと雨がっぱを買ってきた。
こいつ、カッパを着て潮干狩りをやるつもりか。ありえない。
おれはそのまま少しうたた寝をしていた。

「本日の潮干狩りは10時からです。もうしばらくお待ちください」
突然駐車場内にアナウンスが流れた。
放送で目を覚ましたおれは外を見ると、相変わらず雨は降り続いている。
え、こんな雨でもやる人なんかいるの?
と思ってよく見ると、なんとおれがうたた寝をしている間に駐車場は一杯になっていた。
しかもみんなカッパを着て海に向かっている。
「潮干狩りに天気は関係ない」という事実をこの時おれは初めて知った。

おれたちもカッパを着て、熊手とバケツを持って海へ行くと、そこにはもう大勢の人が
貝を取り始めていた。

おれたちは適当なところで砂を掘りはじめた。
が、全然貝が出てこない。おれの数十年前の記憶では、もっと簡単にじゃんじゃん貝が出てきたように思うのだが。

しばらく掘ってやっと1個、またしばらく掘ってやっと1個、というような膠着状態が続いた。
こんなんじゃ子供もつまんないだろう。
しかし息子はそれはそれで特に不満を持っているようではなかった。

だんだん風も強くなり、おれは早く帰りたかったが息子は「もっといる!」と、雨で頭がびっしょり濡れているくせに帰りたがらなかった。

残り1時間という時に、少し沖の方で妻が大量に貝がいるポイントを発見した。
そこはまさに掘ればどんどんアサリが出てくるようなポイントだった。
そこでようやく我々はイメージ通りの潮干狩りをして、約3キロ弱のアサリをゲットして帰ったのだった。

子供はどう思ったか知らないが、雨でも意外に楽しかったおれは、さっそく次はいつ行こうかと心の中で思っていた。
でもできればやはり雨は降らないに越したことはない。
しかし息子は「次も雨の日に行く!」と、やはり相当満足したようだった。

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