モルモン教のお兄さんと勝負した

スピリチュアル

初めておれを勧誘したのはキリスト教の中の一派だった。
おれがまだ18歳の頃だった。
当時、池袋の予備校に通っており、その帰り道、駅のロータリーで外人二人組みが話しかけてきた。

「英語ノ勉強サークルヲヤッテマス。ゼヒキテミマセンカ?」

おお、外人の友達を持てばもうネイティブスピーカーへの道は約束されたようなものだ。
おれはそそくさと彼らについていった。
そこはマンションの一室だった。そこで彼らは聖書を取り出してキリスト教の話を始めた。

「イマノ聖書、マチガッテヤクサレテイマス」

彼らは今までの聖書は誤訳されており、真実を伝えていないと言う。
いきなり聖書の話をされてしまったのでおれはドン引きしてしまったが、「聖書が真実を伝えていない」というのは今になってみればうなずける話だ。もっともだからと言って彼らの教えが真実だとも思わないが。

彼らはモルモン教の布教活動をしていたのだった。
ネイティブスピーカーにはなりたいが宗教には入信したくない。
英語の勉強と入信は交換条件だったので受験生の身でもあるおれは当然辞退した。

日本は信教の自由が保証されているので別に他人が何を信じようと勝手だが、モルモン教の外人作戦はその1年後にも別のところで遭遇した。
当時おれは東京・三鷹に住んでいたのだが、夜、駅を降りると外人の兄ちゃんに同じような手口で声をかけられた。
「あなたはモルモン教の勧誘でしょ」
と言うと「そうだ」とあっさり認めた。
多分歳はおれと同じくらいだろう。入信する気など全くなかったが、おれは妙に親近感を持って彼のアジトについていった。
そこでどんな話をしたのかまったく覚えていないが、なぜか最後に彼は「腕相撲をしよう」と言い出した。おれは高校の時、体操部にいたので筋力には過剰な自信があり、事実当時、腕相撲で負けた記憶がない。おれは喜んでその挑戦を受け、見事に秒殺で勝利した。
そしておれたちは握手をして別れたのだった(実話)。
もちろん入信はしていない。

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