第九話 裏の狂人ジジイ再び!

隣人トラブル

レジャーで休むことはあっても体調不良ではめったに会社を休まない主義だったが、久しぶりに今日は会社を休んでしまった。昨日から発熱し、それが下がらなかったことと、今日のスケジュールを考えると休むなら今日しかないと思ったのだ。おかげで今日予定されていた飲み会も延期だ。

今日はずっとおとなしく寝ていたのだが、午後、妻が買い物から帰ってくるとおれにひそひそ声で話し始めた。別に家の中なのだからひそひそ話す必要もないのだが。
しかし話の内容は驚いた。
つい今しがた、裏の家のジジイと話をしたというのだ。
それは子供を連れて買い物から帰ってきたとき、偶然家の前でばったり第二種接近遭遇をしてしまったそうだ。あまりにも突然だったので、仕方なく何事もなかったように満面の笑みを浮かべて「こんにちわ~」と言ってみたそうだ。
するとジジイもまるで何事もなかったように子供を見ながら「いや~でっかくなったなあ」などと普通の会話を始めたそうだ。こいつ、自分のしたこと完全に忘れているんだろうか。

いや、そうではなかった。
「この前は悪かったねぇ。窓につけてる板、部屋が暗くなっちゃうだろうから外してもいいよ」
これは襲撃のあった後すぐに、裏のうちに面した窓にはすべて板で覆いをかけたのだ。
「いやあ、お宅の旦那さんも昔はおとなしくていい人だと思っていたんだけど、ああやって毎日窓に顔ひっつけてこっちのぞかれちゃあねぇ。それであん時はカッとなっちやってさあ」

何を言っているのだこのジジイは。おれが毎日窓に顔をひっつけて裏に住んでるジジイの家をのぞいていただと? 1月の時はうちの奥さんが風呂場の窓から裸になって自分の家に見せてるとか言ってて、今度はおれがのぞいていたというのか。

それからジジイは近くに住む優秀な息子がすでに大きな家を建てて一緒に住もうと言ってる、この家が売れればすぐに行くのだがこのご時世だからなかなか売れない、6月には白内障の手術をするんだ、向かいのオババは今回みたいなこと(我が家とのトラブル)があるとすぐに面白おかしく広めるから気をつけよう(お前が言うな!)、などと世間話をそれこそ何事もなかったようにしてきたという。

妻はおれに「今度会ったら、絶対に何事もなかったように挨拶してよね」と迫ったが、それはたぶん無理だな。
無視することはあっても絶対挨拶なんかしない。大人げないと言われようが幼稚だと言われようが、おれは絶対イヤだね。

「いいじゃん、今度また攻めてきたら、今度こそ本当に警察に引き渡してやる。飛んで火に入る夏の虫だ、いつでも来やがれ」
「あなたは普段家にいないからそんなこと言えるのよ。あたしは精いっぱい勇気を出したんだから、絶対あなたもそうしてよね、キッ!」

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