子供が学校で、ザリガニ釣りに行くという。
そのための仕掛けを作っていた。仕掛けと言っても割りばしの先に紐を付け、そこにスルメの破片をくくりつけるだけらしい。最近の小学校ではそんなこともやるんだ。
そうか、ザリガニを捕りに行くのか。楽しいんだろうな、でも・・・かわいそうだな、ザリガニが。
おれの子供の頃は家から5分も歩けば田んぼや山や自然にあふれていた。
オタマジャクシやザリガニ、カエルなど捕りまくっていた。子供は狩猟本能のまま昆虫やらザリガニやらカエルやら何でも捕獲する。それを友達や親に見せて「スゴイね」と言ってほしいだけなのだ。
小学5年生の頃、自転車で隣町の川辺の田んぼに行ったら大量のトノサマガエルを捕まえることができた。
喜んで家路に着くと、途中で20代くらいの兄ちゃんに止められ、「そんなにたくさんのカエルをどうするのか」と問い詰められた。「学校に持っていくんだ」とウソをついたが、「こんなに必要ないだろう」とその兄ちゃんは大量に捕まえたカエルの2/3ぐらいを川に返してしまった。
ちきしょーと思いながらも相手は大人だ。家に帰ったおれは「本当はこの3倍も捕ったんだ、信じてくれよ」と親に言った。
同じように私は子供の頃、釣りが大好きだった。毎週のように川に釣りに行って、よくフナやハヤを釣って喜んでいた。
大人になったらキレイな彼女を連れて一緒に釣りに行くんだとか、将来は川か湖の近くに住んで、休みのたびに子供と釣りに行くんだとか妄想していた。
そんな高校2年の夏休み、級友と3人で芦ノ湖に釣りキャンプに行った。
芦ノ湖畔のキャンプ場で、ちゃんと本物のテントを張って、釜を作って火を起こし、飯盒炊爨でご飯を炊いた。
寝るのはもちろん寝袋だ。
かなり本格的なキャンプだった。そして朝から夕方まで手こぎボートで出かけ、1日中釣りをしていた。
私の記憶では確か2泊3日だったと思うが、驚くことにただの1匹も釣れなかった。
と同時に不思議なことに、私の釣りに対する興味はウソのように消えてしまった。
それどころか「レジャーで生き物を殺すなんて・・・」という仏心まで芽生えてしまった。
それ以降、本当に何十年も釣りをしなかったし、したいとも思わなかった。
唯一それを破ってしまったのは昨年、子供の夏休みに連れて行った軽井沢のおもちゃ王国の釣り堀で、子供のためにニジマス釣りをやってしまったが、自分としてはとても後味が悪かった。
で、話は戻るがわが子のザリガニだ。
息子は4匹捕まえてきた。見ると、ちっこいエビが4匹いた。
ザリガニと言えば当然アメリカザリガニをイメージしていたおれは、そのちっこいエビはザリガニではなくただのエビにしか見えなかった。そのまま揚げてしまえばまさに居酒屋で出てくる川エビだ。
おれはわが子に言った。
「1日遊んだんだから今日はザリガニさん、おうちに帰してあげようか」
「やだ」
・・・。
おれはよく、小学校の時におれからカエルを取り上げて川に帰してしまった兄ちゃんのことを思い出す。
あの人はいい人だったんだな・・・。
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