テニスの試合に出たんだけど 前編

エッセイ

「今度一緒にダブルスの試合出ましょうよ」
週一で通っている近所のテニススクールの同僚(?)が突然言い出した。
「え、ぼくとですか?やめといた方がいいですよ」
「いやぁ、遊びですから」
「いやいやいや、あなたはぼくが試合になるとどれだけ醜態をさらすか知らないからそんなこと言えるんですよ」
「あはは。大丈夫ですよ、遊びですから。まあ考えておいてくださいよ」

テニスは最初の会社にいた時、会社の近くにテニススクールが出来て、同僚の付き合いで始めたらハマってしまい途中10年くらいのブランクがあったが数年前から再開していたのだ。自分で言うのもなんだが、自分は結構運動神経はいい方だと思っていた。しかしテニスは想像以上に難しく、なかなか上達しなかった。何年たってもサーブが満足に打てず、だから試合なんて自分には無縁のものだと思っていた。だってサーブが打てなきゃ試合にならないし。

数年前、そんなおれを見かねて妻が勝手に試合に申し込んできた。妻のテニス仲間が試合のパートナーを探していて、「ならうちの旦那、使っていいよ」と勝手に約束してしまったのだ。それはスクールの中の交流試合で、普段の練習に毛の生えた取るに足らないものだったが、おれにとっては一大事だった。サーブが入らなければ試合にならない。
そこでテニス仲間に声をかけ自主練をした。結果、サーブの代わりにテニスエルボーになってしまった。
接骨院などにも通ったが、結局肘が痛いまま、初めてテニスの試合に出ることになった。

第1試合の相手は50代後半とおぼしき夫婦だった。そして特別上手いとか強いとかの印象は無いが6-0であっという間に負けてしまった。
第2試合、「ぼくたち初級なんでお手柔らかにお願いしまーす」と相手チームの男は言った。「感じ悪り~」と思った。そして試合は負けた。ほとんど自滅に近いつまらない負け方だった。
第3試合、上級者ペアとの試合だった。これも確か6-0で一方的に負けた。
んで第4試合。これはなんと0-4で勝ち進んで行ったが、4セット目以降怒涛の反撃、ではなく怒涛の自滅(自分の勝手なミス)によりなんと6-4に逆転負け。
そして時間が余ったとかで急きょ第5試合が組まれた。なんと余計な事をしてくれるのだ。
おれとペアを組んでるおばちゃんは「最後くらい勝たないとね」と燃えていた。
おれはもうこの時点で肘が徹底的に痛くて早く帰りたかった。試合なんてどーでもよかった。

最後の相手は初中級らしき女性とどう見積もっても初級ほやほやの男性のペアだった。
いくらなんでもこのペアに負けるわけにはいかない。
しかしもう肘は限界でボールに合わせるのがやっとで、ちょっと後ろめたさはあったがボールを初級男子に集めた。
なんとか接戦で勝ったが、こんな勝ち方では嬉しくもなんともなかった。
1勝4敗。初めての試合はさして楽しい経験でもなかった。

その1ヵ月後、勢いで今度は同じスクールのチーム対抗戦というものに出ることになった。
これは6人くらいでチームを組んで男子ダブルス、女子ダブルス、ミックスダブルスと試合をしていくもので、結果はよく覚えてないが確か全敗だったはずだ。

そして2年後、初めて試合をしたときに組んだおばちゃんがまた試合に出ようと誘ってきた。
おれもスクール変えたし我ながらかなり上達したんじゃないかと勘違いしていたから二つ返事でOKした。

さて、2年ぶりの試合、しかも今回はスクール内の懇親試合ではなく、一応オープンの試合だ。
全然知らない人たちとやるわけだ。
おれは想像以上に緊張した。それはなんともブザマなものだった。
サーブは入らない、ストロークは打てばネットかアウトの連続。
「おかしい、おれはこの2年で相当上手くなってるはずだ・・・こんなはずはない」
焦れば焦るほど空回りしていった。
肝心な場面でダブルフォルト。さすがにペアを組んだおばちゃんも
「ここでダブルフォルトはないでしょう・・・」とキレれかかっていた。
「あんたいい加減にしなさいよ」と顔が怒っていた。
4試合やってまたしても全敗。今回もほとんど自滅ゲームだった。

それからさらに2年、また誘いがやってきた。

断るのは簡単だがはたしてそれでいいのだろうか。
おれが迷っているうちにメールが来た。
「もう申し込んじゃいましたよ」

つづく

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