いびきを止めろ②

そのクリニックの入っているビルは銀座と新橋の中間あたりにあった。エレベータで上がっていき、着いたところは、クリニックというより何かのサロンの入り口のような感じで、WEBには「診療科目:皮膚科・内科」と書いてあったが、壁に貼ってあるパネルなどを見るとリフトアップやしわ改善、二重瞼がどうのといったものが掲示されていて、内容はどうみても美容外科だ。実は予約するときもこの「皮膚科・内科」というのが少し引っかかっていた。
喉がテーマなのだから普通に考えれば「耳鼻咽喉科」じゃないか。鼻が原因でいびきをかく人だっているんだし、皮膚科や内科で分かるのだろうか。まあとりあえず今日は話を聞きに来ただけだし・・・。

「お待ちしておりました」と受付のお姉さんが対応し、個室へ案内された。問診表とアンケート用紙を渡され、「記入が終わりましたらテーブルにあるボタンを押してください」と言って出ていった。一通り記入しボタンを押すと先ほどの受付のお姉さんがやってきて向かいの椅子に座った。
「本日カウンセリングを担当します○○です」
受付と兼任・・・。
そこで約30分ほど質疑応答。今どんな状況なのか、いつまでに治したい思っているのかなどを話した。
「なぜ当院に来ようと思ったのですか」
おれはすかさず防衛線を張った。
「いや、レーザーで切り取ることも選択肢としてはあるんです。保険もきくようだし。でもそりゃ誰だって痛い思いはしたくないでしょ。切らずに治す方法があるならと思って”話”を聞きに来ました」
「そうですよね。切るとまず2週間は痛いですしね。それではドクターを呼んできますね」
と言って再び引っ込んだ。
そしてまたドアがノックされ、今度はドクターが入ってきたのだが・・・若い!
20代後半?30行ってる?それくらい若い。WEBサイトに一応写真は出ていたが、実物ははるかに若く見える。女子から見たらおそらくイケメンの部類だろう。医大を卒業して研修医かなんかをやって、開院したとなると、どう考えても「時間」という物理的なキャリアとしては短いはずだ。大丈夫なんだろうか。そういえばWEBにも「開院キャンペーン価格」とか書いてあったから出来たばかりなんだろう。若くしてこの立地に開院して、美容外科ならそれなりにいろいろな医療器材も必要だろうし、家がよっぽど裕福なのだろうか。あるいは超努力家のたたき上げなのだろうか。

ドクターはおれの問診表を見てから
「それでは喉を見せてください。口を大きく開いて」
と言っておれの喉奥を見た。
「ふーむなるほど」
そしておれの今の喉の状況を説明しレーザーの施術で改善するであろう、しかしそれには最低6回、その後は年に数回・・・と説明していった。
「そこまでやるとなると結構な費用が掛かりますよね。一体最終的にいくらかかるんですか」
「あ、それはカウンセラーの方からご案内します。それでは交代します」
と言ってドクターは出て行ってしまった。予想はしていたが鼻に関しては話題にも上らなかった。

ドクターの”診察”はあっという間に終わった。WEBに「カウンセリング、初診料は無料です」とあったが、こんな秒殺の診察で金を取ったらそっちの方が問題だろう。
そして入れ替わりでさっきの受付兼カウンセラーのお姉さんが入ってきた。
そしておもむろにコースの説明を始めた。
「1回目のレーザー照射から、2回目は2週間後に受けていただきます。その後は月に1回、合計6回ですが、メンテナンスをしていかないとまた元に戻ってしまうので年に数回照射していくといいですね」
「するとスゴい費用がかかりますよね」
「ドクターから説明があったと思いますが、○○さんのケースだと、6回で改善していくだろうということです」
しかしそんなのはすぐにウソだと気づいた。なぜならお姉さんが持ってきた価格表には最初から3回コース、6回コース、9回コースと3パターンの設定が決まっていたからだ。3回だと効果が薄い、9回だと高い、ならその間をとって6回へ、と誘導する作戦だろう。おそらく全員に6回コースを勧めているはずだ。しかしその費用、なんと50万円を超える。
普通の感覚であれば、即否決!となるだろう。おそらく向こうもそれは想定内で、ちゃんとクロージングのための次の手を用意していた。

つづく

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