日曜日、子供が急に「耳が痛い」と言い出した。
耳が痛い・・・耳の病気と言えば中耳炎くらいしか思い当たらない。もっと言えばその中耳炎すら、どんな病状なのか実はよく分からない。
昨日プールに行ったので、耳に水が入ったまま炎症でも起こしたのか。
いずれにしてもよく聞く名前なのでたいしたことはないのだろう。
その日は幼稚園のバザーに参加しなければならなかったので、それを途中で早退させ、休日当番の隣町の耳鼻科に連れて行った。
「中耳炎の始まりですね」
と医者は言った。やっぱり中耳炎か。
「薬を出しておきますが2、3日したらまた近くの耳鼻科に行ってください」
同じ市内なら子供の医療費はタダなのだ。
そして3日後、仕事中に妻から電話がかかってきた。
「駅前の耳鼻科に行ったんだけどね、膿でパンパンに腫れてるの。カメラみたいので見せてくれたんだけどね、スゴイのよ。薬はくれたんだけど、切って膿を出したほうがいいんだって」
切る?
耳の中を?
そんな大ごとなのか?
たかだか中耳炎で?
おれは早速Yahoo知恵袋で調べてみた。
「鼓膜切開」というやつらしい。
読んで字のごとく、鼓膜を切開して膿を出すのだという。
鼓膜を切開する???
おれは寒気がした。実は高校2年の時、鼓膜を傷つけたことがあり、その治療で何日か耳鼻科に通ったが、耳の治療というのはとにかく痛いのだ。その時は鼓膜が破れたわけではないが、それでも十分治療は痛かった。
その話をしていた時、同じクラスの名前は忘れたがヤンキーが
「耳って痛てえんだよなー」
としみじみと言っていたのを覚えている。
Yahoo知恵袋をいろいろ見ていくとやはり子供に多いらしい。
「治療が痛そうでみるのも辛かった」とか
「できれば代わってあげたかった」
など、それが激痛を伴う治療であることを想像させた。
わが子は今年の5月にアデノイド&扁桃腺除去手術という、全身麻酔による結構な手術をしたばかりだ。入院1週間。それが今度は耳の手術とは。
おれは胸が痛んだ。本当に代わってあげたい。
おれは妻に言った。
「中耳炎なんだから薬で治んないのかな。抗生物質で治るんじゃないの?」
すると妻は突然キレて
「じゃあこのままほっとけって言うの?医者が切ったほうがいいって言ってるのよ!」
「薬で治らなかったら、切るでもいいんじゃない?」
「これ以上ひどくなったらどうすんのよ!お医者さんが早いほうがいいって言ってんだから切ればいいでしょ!」
当然麻酔をするらしいが、これは耳の中に注射器を挿入して打つのだろうか。
ああ想像しただけでも恐ろしい・・・。
たぶん号泣なんてもんじゃないだろうな。絶叫だろうな。
かわいそうに・・・。
しかし妻は、もう翌日に切ると決心してしまっていた。そうか、今日は早く帰ろう。何かお土産がいるな。でも今日はぐったりだろうな。
そして次の日、4時くらいに妻から電話がかかってきた。どうした、一大事か!だからやめろと言ったのに!
「もしもし、今もう帰ってきたんだけど、一瞬だったよ」
「・・・?切開手術だろ???」
「そうだよ」
話によると、綿みたいのに麻酔薬を染み込ませ、それを耳に挿入して麻酔をかける。なんだ注射じゃないんだ。
そして麻酔が効いたらレーザーメスでパスンと穴を開け、膿を吸引していく。
あっという間に終わったらしい。
Yahoo知恵袋とずいぶん話が違うな。
「絶叫しただろ?」
「んー、ちょっと泣いたけど、先生にも強いなあって言われてた」
「今ぐったりしてる?」
「友達が来て公園に遊びに行っちゃったよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
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