タバコが一気に400円台になるという。こういう大増税は大歓迎だ。むしろ400円台なんてケチ臭いこといわずに一気に800円とかにちしゃえばいいのに。そうだ、この値上げに便乗して酒も大増税しちゃえばいい。缶ビールも1本500円くらいにすればいい。
おれもまだ二十歳そこそこのガキの頃、かっこつけてタバコを吸っていた時期がある。
当時、おれはド素人のくせに音楽活動に熱中しており、今思えば病的で超偏屈な性格をしていた。授業が終わった放課後、ギターを抱えて空いてる教室に一人こもり、誰もいないところで一人で歌とギターの練習をしていた。
4年間も続けたが歌もギターも全く上手くならなかったが、自分ではけっこうイケてんじゃないかと信じきっていた。なぜだろう。きっと心の病だったのだろう。あるいは何かに憑依されていたという可能性も否定できない。おそらく周囲からも「こいつはおかしい」と思われて当然のはずだったが、なぜか誰も「きみ、ちょっとおかしいんじゃないか」とは言ってくれなかった。
病的な日常を送っていたある夏、おれは唐突に駅の売店でマイルドセブンを購入した。
初めてタバコを手にしたおれは、少し緊張しながら吸ってみた。
口の中がざらざらするようで、別にそれがおいしいとか気分が落ち着くとか、そんな印象は何もなかった。しかしおれはタバコを吸わなければと思った。なんでだろう、やっぱり少し頭がおかしくなっていたんだろう。
そうして始まったおれの喫煙習慣は、幸いにも9ヶ月で終わった。理由は単純で、運動系のサークルに誘われてそっちに入ったからだ。タバコを吸いながら走ることは出来ない。その単純明快な理由で本当にやめてしまった。
しかし喫煙の代償は安くはなかった。きっと体質に合わなかったのだろう。
吸い始めて4ヶ月目に喘息を起こし、入院する羽目になった。
そしていったん目覚めたこの喘息はその後の人生でかなり長期間引きずることになった。
タバコは体内に凶暴凶悪な活性酸素を発生させ、血管をもろくし、カラダを強烈に酸化させる。
自分で自分の体を痛めつけているわけだ。それで本人がガンになって死のうが心筋梗塞で死のうが知ったこっちゃないが、副流煙という毒ガスを周囲に撒き散らしている。
部屋は臭くなるし、特に食事時に煙が回ってくるともう料理が台無しだ。
そういえば、この前会社の近くの日高屋でスゴい人を見た。
その日おれは健康のためにと「野菜炒め定食ごはん少なめ」を注文した。
おれがこのヘルシー食を食べていると、サラリーマン風のオヤジが入ってきて少し離れた席に座った。そいつはラーメンを注文してからすぐに胸ポケットからタバコを取り出し、「シュボッ」と火をつけた。おれのいた場所も時間帯も、禁煙席でも禁煙タイムでもなかったのでどうしようもない。
徐々に煙が漂ってきた。
「まいったな」と思いながらも、「こいつも料理が出てくれば消すだろう」と考えガマンしていた。
やがてそいつの注文したラーメンが運ばれてきた。
そいつはタバコの火を消した。が、すぐに新しいタバコに火をつけた。
そしてもっと驚いたことに、そいつはラーメンを食べながら、一緒にタバコを吸っていたのだ。
右手に箸、左手にタバコ。ラーメンを食べてはタバコを吸い込み、またラーメンを食べてはまたタバコを・・・。
結局そのオヤジはずっとタバコを吸っていた。ここまで来ると「早く死んでしまえ」と思えてくる。
受動喫煙ほど迷惑な話はない。
会社の飲み会でも近くのやつがタバコを吸っていれば、まず間違いなく服にタバコの煙の臭いが染み付く。そのまま家に帰ると
「うわっ!なにこの臭い。またクリーニング出さなきゃなんないじゃない」
とおれが鬼嫁に怒られるのだ。まったくもって迷惑な話しだ。
さらに言えば受動喫煙だけでガンになった人も星の数ほどいるというではないか。
こうなったらもう殺人罪だ。
歩きながらタバコを吸うバカもいる。
手に持ったタバコの火が子供の目に直撃、なんてなったらこいつは即刻死刑にするべきだ。
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